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雪組 夢乃 聖夏

宝塚歌劇 100周年に向け、雪組新トップスター壮一帆を中心とした新生雪組が、『ベルサイユのばら―フェルゼン編―』を5月27日まで宝塚大劇場で絶賛上演中。美しい立ち居振る舞いで颯爽とした輝きをみせる夢乃聖夏、新しい魅力あふれるジェローデルを演じ、観る人を夢の世界へと誘う。

品格を漂わせる貴族     ジェローデルが剣を抜く

 宝塚大劇場では5月27日まで、新トップスター壮一帆を中心とする新生雪組が『ベルサイユのばら』-フェルゼン編―を上演中だ。宝塚歌劇の名作中の名作『ベルサイユのばら』は1974年の初演が空前のタカラヅカブームを巻き起こして以来、何度も再演されてきたが、ひとつとして同じものがない。“オスカルとアンドレ編”や“オスカル編”はフランス革命を民衆寄りの視線で描いており、“フェルゼンとマリー・アントワネット編”や“フェルゼン編”は貴族側からフランス革命を物語る。しかも“フェルゼン編”ならすべて同じ脚本かというと、そうではなく、今回の新生雪組“フェルゼン編”には1990年に花組で上演された“フェルゼン編”にもなかった新場面が加わっている。その新生雪組ならではの新場面に大きく関わっているのが、2001年に宙組公演『ベルサイユのばら』―フェルゼンとマリー・アントワネット編―で初舞台を踏んだ第87期生の夢乃聖夏さんだ。

 「『ベルサイユのばら』に出演させていただくのは5回目です。これまでは反王政派の民衆の役でしたが、今回初めて王室を守る立場の貴族の役をいただき、私の中の『ベルサイユのばら』の世界が広がったように感じています」

 昨年4月に星組から異動してきた夢乃聖夏さんにかかる期待は大きく、貴族の中の貴族、あのジェローデル近衛少佐役が与えられた。

 「ジェローデルという人はあたたかく品性があり、確固たる信念をもっていて、常に貴族としての誇りを忘れずに持ち続けています。彼を演じるには、オスカルの頬を叩く場面でも美しい立ち居振る舞いでなければならないと思います。お衣装も、これまでに着たことがありそうでなかったものばかりなので、マントさばきを含め、どうしたらジェローデルらしい綺麗な立ち居振る舞いができるのかと、お稽古場で繰り返し鏡を見て研究しました」

 今回は割愛されているが、アンドレに対するオスカルの愛を知ったジェローデルは自ら身を引く。「美意識の高い人です。ただ諦めるのではなく、身を引くという愛の形を選ぶのが、彼の美学なんだと思います」

 さて後半、ジェローデルがスウェーデンに戻ったフェルゼンを訪ねて王宮の危機を伝えるところから、物語は激しく動き出す。国王一家の救出に向かうフェルゼンとジェローデルの行く手を阻止しようと、国境守備隊が二人を取り囲む。やむなく剣を抜くフェルゼンとジェローデル。王家の飾り人形と言われてきたジェローデルが、フェルゼンと一緒に決死の大立ち回りをみせる。この場面こそ、新生雪組のための新場面である。「これまでの『ベルサイユのばら』には恐らく、フェルゼンもジェローデルも剣を抜いて戦うイメージはなかったと思います。この場面でジェローデルの新しい色を出し、さらに魅力的に演じられたらと思います」。夢乃聖夏さんの言葉通り、この新場面は1番の見せ場になり、フェルゼンはもちろん、ジェローデルの芳しい息遣いが伝わってくるような胸が高鳴る活劇に、観客は皆、酔いしれている。

 これまで夢乃聖夏さんは『エル・アルコン―鷹―』新人公演で主演し、宝塚バウホール公演『ANNA KARENINA』の主人公アレクセイ・ヴィロンスキー伯爵を演じ、宝塚バウホール公演『摩天楼狂詩曲(ニューヨークラプソディー)』にも主演した経験をもつ。雪組へ異動後は、宝塚大劇場公演『JIN―仁―』の火消しの千吉や、シアター・ドラマシティ公演『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』のバイロン侯爵など、個性的な色濃い役で観客を魅了。「歴史あるジェローデルのイメージに嵌りつつも、私の色を出すことができれば、そのためには気を緩めないことと、肝に銘じています」

 あえて言おう、夢乃聖夏さんとジェローデルの美学との共通点は、常にクールでありながら、ここぞというときに、胸の底からカッと熱くなるところだろう。

夢乃 聖夏さん

2001年『ベルサイユのばら2001』で初舞台、星組に配属。07年『エル・アルコン―鷹―』で新人公演初主演。08年バウ・ワークショップ『ANNA・KARENINA』でバウ初主演。12年雪組に組替え。
出身/佐賀県 愛称・ともみん、夢ちゃん

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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