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雪組 有沙  瞳

7月17日から8月17日まで上演中の雪組宝塚大劇場公演は、時は江戸中期、とある藩で起きた叛乱を背景に悲恋を描くミュージカル・ノスタルジー『星逢一夜』と、情熱の愛と夢の数々を描いたラテン・ショー『La Esmeralda』の2本立て。 日本物が特に好きとまぶしい笑顔で話す若手娘役、有沙瞳。伝統を受け継ぎ、感動を届ける舞台人としての成長を誓う。

宝塚の美しい日本物… その伝統は若手にも受け継がれる

 7月17日に初日を迎える雪組宝塚大劇場公演は久々の和物『星逢一夜』と、黒塗りの化粧で情熱的に歌い踊るレビュー『La Esmeralda』の2本立てだ。新作オリジナルの日本ものとラテンラバーたちの愛の世界―。休憩を挟んで3時間、まったく異なる世界に旅する楽しさこそ、宝塚歌劇観劇の醍醐味なのである。
「『La Esmeralda』のプロローグの次の場面で、大好きな歌をうたわせていただきます」と笑顔の美しい有沙瞳さん。2012年に初舞台を踏んだ第98期生だ。「ジプシーの扮装でペアで踊り、その後、掛け合いで歌わせていただきます」。そのお相手は、若手男役の注目株、月城かなと。2014年6月『一夢庵風流記 前田慶次』新人公演では、主演を演じた月城かなとの相手役として、有沙瞳さんが初ヒロインに抜擢された。「とにかく一生懸命やるしかないと硬くなっていましたが、『一夢庵風流記 前田慶次』は壮一帆さんと愛加あゆさんの退団公演。愛加さんの役を演じさせていただくということで、愛加さんが大切にされていることを少しでも受け継ぎたいと思って取り組みました。次期トップ娘役になることが決まっていらした咲妃みゆさんからも“新人公演では、本公演で愛加さんに当たっているスポットライトを当てていただける。その有り難さを感じながらお芝居すれば感謝の気持ちが溢れ出てくるし、実感すればするほど舞台を楽しめるようになるのではないかしら”とおっしゃっていただいたことで、気持ちがすっと落ち着いたんです。すごくありがたかったです」

 2015年1月1日、新トップスター早霧せいな率いる新生雪組披露公演
『ルパン三世―王妃の首飾りを追え―』『ファンシー・ガイ!』が幕を上げ、有沙瞳さんは望海風斗扮するカリオストロ伯爵の恋人セラフィーナを演じた。それが大劇場での初通し役。同年5月、望海風斗主演のシアター・ドラマシティ公演『アル・カポネ―スカーフェイスに秘められた真実―』の2幕では初めての男の子の役に巡り合った。「アル・カポネと妻のメアリーが、マフィアの息子だけれど、まっとうな生活を送らせてあげたいと願って育てた10歳の男児という役。この時期に男の子の役を経験したことで、様々なことを学ぶことが出来、とても感謝しています」

 有沙瞳さんが『星逢一夜』で演じる涼は、早霧せいな扮する三日月藩藩主の次男・天野晴興(紀之介)の友、鳳翔大扮する永太の恋人だ。「10歳から33歳の子どもから大人までを演じるという、新たな挑戦をさせていただいています。限られた場面でその成長をお伝えするためには、よほど役の芯が私の中でしっかりしていないとできないと感じています。役としても育っていきながら、上級生ばかりのグループの中で私自身も育てていただいています。作・演出の上田久美子先生が台本に書かれているメッセージをしっかり理解して、一場面一場面を大切に演じていきたいです」

 まだ中学生だった頃、宝塚ファンだった公文教室の先生に勧められ、宝塚大劇場で初観劇したという有沙瞳さん。すぐに宝塚歌劇が大好きになり、娘役さんになりたい!と音楽学校受験を決意したという。「子どもの頃から演歌を習っていました。そのせいかもしれませんが日本ものが特に好きです。日本ものの経験豊富な雪組の上級生は着物の着方や髪型もとても素敵で、一から教えていただけるのは幸せです。ひとくちに娘役さんと言っても宝塚歌劇101年の歴史の中にはさまざまな娘役さんがいらっしゃって、奥が深いなあと思います。役を通じてお客様に感動をお届け出来るような、あの役のお芝居がよかったねと言っていただけるような舞台人になれるよう、精進します」

 11月に月城かなとが初主演する宝塚バウホール公演『銀二貫-梅が枝の花かんざし-』で、ヒロイン役に決定した有沙瞳さん。まだ研4だが、風情のある娘役・有沙瞳さんの今後の活躍から目が離せない。

有沙  瞳さん

2012年『華やかなりし日々』で初舞台、雪組に配属。14年『一夢庵風流記 前田慶次』で新人公演初ヒロイン。
出身/三重県  愛称・くらっち、ひとみ、みほ

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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