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宙組 純矢ちとせ

6月5日から7月13日まで上演中の宙組宝塚大劇場公演は、ヴェルディのオペラ「アイーダ」を2003年星組で宝塚バージョンとして上演、好評を博し12年ぶりの再演となった『王家に捧ぐ歌』。 大人の女性を存在感豊かに演じる歌姫・純矢ちとせ。 宙組トップ朝夏まなとの宝塚大劇場お披露目公演を艶やに盛り上げる。

宙組きってのエトワール。 その声が大劇場に響く

 新トップスター朝夏まなとが率いる新生宙組公演『王家に捧ぐ歌』―オペラ「アイーダ」より―が6月5日、宝塚大劇場で初日を迎えた。ヴェルディのオペラ「アイーダ」を新たな脚本と音楽で綴った宝塚バージョンが初演されたのは2003年。第58回芸術祭優秀賞を受賞した名作が12年ぶりに再演され、第89期生の純矢ちとせさんがエジプト王ファラオの娘アムネリスに仕える女官ワーヘドを演じている。
「女官ワーヘドはアムネリス様には従順ですが、エジプト軍に捕らえられたエチオピアの王女アイーダには見下した態度で接します。人間の二面性をみせるところに、女官ワーヘドの役づくりの面白味があるのではないでしょうか」

 初演と同じ2003年に初舞台を踏んだ純矢ちとせさんは、今では女官役の組子たちをまとめるリーダー的存在だ。「いつのまにか上級生になっていて、組の中でも自分の役割を意識することが増えました。みんながんばっているので少しも不安はありませんが、さらにより良い場面にする為にはどう演じたらいいかなということを考えますね」

 大人の女性を色鮮やかに演じて評価の高い純矢ちとせさんが、もと男役だったことを知る人は少ないかもしれない。「研3まで男役でした。大階段で男役のダンスを踊るという夢が叶ったあと、なぜか自分の中で男役を演じることに対して照れを感じるようになり、このまま男役を続けていくのは無理だなと娘役への転向を決意しました」

 娘役デビューは06年2月『ベルサイユのばら―オスカル編―』。これが絶妙のタイミングだった。なぜなら稽古中に宝塚バウホール公演『やらずの雨』のオーディションが行われ、その結果ヒロインに抜擢されたのである。「もし『ベルサイユのばら』で娘役に転向していなければ、次のバウホール公演でヒロイン候補にすらなれなかったわけですから、とても幸運でした」

 2008年に雪組から宙組に移籍したあとも、2009年8月『逆転裁判2―蘇る真実、再び…―』でバウヒロイン、大劇場公演『誰がために鐘は鳴る』と中日劇場公演『仮面のロマネスク』のエトワール、2013年9月『風と共に去りぬ』ではスカーレットⅡを演じるなど、多彩な活躍ぶりだ。「まさかスカーレットⅡをさせていただけるとは思っていなかったので、びっくりしました。スカーレットⅡの台詞は朝夏まなとさん扮するスカーレットの本音を語る存在ですから、スカーレットがどう思っているかをわかった上で役づくりをしなければなりません。自分の想像だけでは演じ切れない役なので、朝夏さんとご一緒に楽しく役づくりをさせていただけて幸せでしたね」

 さらに『カサブランカ』のイヴォンヌ、『ヴァレンチノ』のアラ・ナジモヴァなどを演じたことで、女役の奥深さを知った。「ひと言で大人の女性といっても、国も年齢も生き方も考え方も違います。人ってそれぞれなんだなと役づくりを通して改めて実感しました。今年3月に出演した梅田芸術劇場公演『TOP HAT』のマッジ役では、陽気なマダムを演じるために、初めて声の出し方や話し方も大きく変えたんです」

 今秋9月15日、宝塚大劇場において開催される『第53回 宝塚舞踊会』では、純矢ちとせさんの美しい舞い姿が観られるはずだ。純矢ちとせさんは宝塚音楽学校入学前すでに西川流の名取であり、今は師範という腕前。音楽学校の受験科目に日舞はないが日舞に秀でたスターの存在は宝塚歌劇の財産である。

 今公演のフィナーレでもまた、エトワールという大役をつとめている純矢ちとせさん。男役から娘役に転向後、出にくくなっていた高い声をトレーニングで鍛えなおしたという彼女の麗しい歌声が、今、大劇場に響き渡っている。

純矢ちとせさん

2003年『花の宝塚風土記』で初舞台、雪組に配属。05年男役から娘役に転向。06年バウホール公演『やらずの雨』で初ヒロイン。08年宙組に組替え。
出身/東京都 愛称・せーこ

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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