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花組 瀬戸 かずや

9月23日まで上演中の花組宝塚大劇場公演は、イタリアオペラの傑作を新たな視点からミュージカル化、フランス革命を背景に実在の革命詩人をドラマチックに描いた『愛と革命の詩―アンドレア・シェニエ―』と、花組の個性が弾け絡み合う熱狂的なショー・オルケスタ『Mr. Swing!』の2本立て。 スタイリッシュな長身が舞台に映える瀬戸かずや、宝塚歌劇の伝統を誇りに、包容力のある男役を目指す。

百年の伝統を受け継ぐ男役を熱く演じたい

 宝塚大劇場では花組公演『愛と革命の詩―アンドレア・シェニエ―』~オペラ「アンドレア・シェニエ」より~と『Mr.Swing!』が9月23日に千秋楽を迎え、10月11日より11月17日まで東京宝塚劇場で上演される。二作品とも座付作者による新作オリジナルだ。特にフランス革命期に実在した詩人アンドレアと伯爵令嬢マッダレーナとの大悲恋を描いた『愛と革命の詩―アンドレア・シェニエ―』は、100年近く新作を創り続けてきた宝塚歌劇の芳香とクオリティの高さを感じさせる力作である。革命詩人アンドレアのナヴァール学院時代からの学友で、ともに革命のために働くアベル・ド・フォンダを演じているのが第90期生の瀬戸かずやさん。「アベルはアンドレアのまっすぐな考え方に触れて心を動かされたのだと思います。アベルという役が説得力を持つためには、アンドレアの信念の強さに負けないだけの強靭な信念を持っていなければなりません。アベルの存在感は、ただの取り巻きではなく、国をかえなければいけないという思いでアンドレアと行動を共にしている仲間としてのパワーをどれだけ出せるかにかかっていますので、澄んだ目の強い輝きや、懐に抱いた真実の思いなどを大切に演じています」

 2010年、瀬戸かずやさんは最後の新人公演『麗しのサブリナ』で、男役の基本であるスーツをすっきりと着こなし、熱さとクールさのバランス感覚を見事に発揮して魅力的な主人公ライナス・ララビーを演じた。2013年、『オーシャンズ11』ではダニーの昔の仲間でカジノのディーラーを務めるフランク・カットンを華麗なカードさばきで魅せた。

 172センチの長身が映え、清潔な色気が薫る、スタイリッシュな男役だ。

 ショー・オルケスタ『Mr.Swing!』のオーディションを「何か新しいチャンスを掴めれば」と思って受けた瀬戸かずやさん。「トップスター蘭寿とむさんとのデュエットダンスの相手役とは知らず、二次に残ってレオタードと巻きスカートで踊るように言われたときは、女役なの?と、ドキドキしました(笑)。新しい表現ができるチャンスをいただきましたので、生かしたいと思います」

 個性の異なる男役3人の役替りが決定して、瀬戸かずやさんは初日から約2週間、宝塚切ってのダンサーで花組トップスターの蘭寿とむとデュエットダンスを踊った。「振付を受ける時は本当に緊張しました。蘭寿さんとの距離がすごく近くて、どこを見ていいかわからず、目の下あたりに視線を置くのが精一杯でした(笑)。舞台に立ってからも緊張は続いています。ダンス自体はスローテンポの曲なので、一つ一つの振りを丁寧に、手の先の動き、腕の下ろし方なども意識しながら、男役が女性に扮して踊る意味や魅力などを探りつつ、女役を演じるつもりで踊っています」

 来年の宝塚100周年に向けての抱負をうかがうと、「新人公演を卒業して3年が経ちました。いつのまにか下級生が増えましたので、お手本の一人になれるように。そして瀬戸かずやにしか出せないものを永遠に追求していきたいと思います。6月に『宝塚巴里祭2013』に出演させていただいたとき、轟悠さんから、舞台のセンターから登場する場面では手を広げて空気を押し出しながら出てくるなど、直にたくさんのことを教えていただきました。ご一緒に黒燕尾を着て踊れたことは光栄の極みです。たくさんの上級生が開拓され築き上げてこられた宝塚歌劇だからこそ、100年続いてきたのだと思いますし、世界に一つしかない宝塚歌劇の伝統を継ぐ男役であることは誇りです。さらに脱皮して、包容力のある男役を目指します」

 クールより熱いほうが好きです、と言い切る瀬戸かずやさん。

「熱い男役でいたいなと、すごく思います」

その熱い男役が時折、クールな横顔を見せるから、気になってしかたがない。
 

瀬戸 かずやさん

2004年『スサノオ』で初舞台、花組に配属。
10年『麗しのサブリナ』で新人公演初主演。
出身/東京都 愛称・あきら

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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