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雪組 彩凪 翔

宝塚100周年に向け2013年宝塚大劇場を締めくくる雪組公演は、社交ダンス教室を舞台に繰り広げられる大ヒット映画を初めてミュージカル化した『Shall we ダンス?』と、宝塚歌劇ならではの華やかなショー『CONGRATULATIONS宝塚‼』の2本立て。 明るく爽やかな舞台姿でスタイリッシュなダンスを魅せる彩凪翔、100年の伝統を受け継ぎ、大人の魅力を出せる、新世代の男役スターを目指す。

バウホール公演の主役を経験し   100周年へ飛翔

 宝塚歌劇が初公演をした1914年から数えて100周年を迎える2014年が、目の前にきている。99周年の宝塚大劇場の掉尾を飾るのが雪組によるミュージカル『Shall we ダンス?』とショー『CONGRATULATIONS 宝塚‼』。同公演は2014年1月2日に東京宝塚劇場で初日を迎え、宝塚歌劇100周年のスタートを華々しく彩る。

 周防正行原作・脚本・監督による同名映画を世界で初めてミュージカル化した宝塚歌劇版『Shall we ダンス?』は、リメイク版のハリウッド映画でも全米トップテンに長くランクインした、ハートフルコメディの最高傑作だ。2006年に初舞台を踏み、今年、新人公演を卒業した第92期生の彩凪翔さんが競技ダンス界のトップダンサー、アルバート役に挑んでいる。アルバートは、ヒロインのダンス教師エラから、競技ダンスのパートナーになってほしいと申し込まれる役どころ。彩凪さんは稽古中に皆と競技会を観に行く機会があり、普段舞台で踊っているタンゴに似ているようで全く勝手がちがい、すごくむずかしいと感じたそうだ。

 4歳からバレエを始めたという彩凪翔さん。宝塚音楽学校を受験したキッカケも、バレエ団の先輩が出演している宝塚歌劇を観に行って、男役のダンスに憧れ、「毎日、舞台に立てることを知って、絶対に入りたいと思いました」

 入団後、わずか2年目で『エリザベート』の黒天使の1人に抜擢され、上級生のダンサーばかりの中で必死に稽古をした。「忘れられない役です」

 今年8月、彩凪翔さんは、スターになるための登竜門と言われる宝塚バウホール公演単独主演を『春雷』でのり越えた。『春雷』はゲーテの半自伝的小説「若きウェルテルの悩み」が原作。婚約者がいると知りつつ、ロッテへの思いを断ち切れず、自ら命を絶つウェルテル。ゲーテとウェルテルの二役を演じた彩凪翔さんは「最後にゲーテとして歌う曲の内容が、私自身に向けての言葉のように胸に迫ってきて、歌いながら涙が出そうになりました」

 ゲーテ役の彩凪翔さんの、「今、ここに新たな一歩を踏み出す」ことを意味する歌唱で幕が下りた。「私自身、舞台経験の少ない下級生の頃は、与えられた役にきちんと応えられたかどうかと自分を問いただす思いや悔しさなどで、すごく悩んだ時期がありました。そんな苦しい時期を経たからこそいまの自分がいる、がんばってきてよかったと思えますし、『春雷』を経験できたことは私にとってすごく大きかったです。真ん中に立つと、いろいろなものを背負って立っていることがわかります。その分、感じることも学ぶことも多く、以前より少し周りが見えるようになってきたのではないでしょうか。これからも経験して学んだことを次の舞台や今後につなげていければと思っています」

 自身を見つめる豊かな感性の結晶が男役・彩凪翔の魅力だ。これまで新人公演の主演は2作。『仮面の男』の主人公フィリップとルイ14世の二役と、『ドン・カルロス』の主人公ドン役。彩凪翔さんの華麗な踊りは同時上演のショー『CONGRATULATIONS 宝塚‼』でも観られる。「ショーは8ヶ月ぶりです。『すみれの花咲く頃』『シャンソン・ド・パリ』『パリゼット』などタカラヅカの有名な主題歌を歌い継いでいきますので、いよいよ100周年を迎えるんだな、と実感しています。これからは若さや勢いだけではなく、大人の魅力を出せる男役を目指し、彩凪翔なりのこだわりや個性を備えていきたいです」

 宝塚歌劇の歴代スターが受け継いできた100年の伝統。さらに受け継ぎ次につなげる新世代のスターである。「100周年を迎え、私自身もまた一皮むけることができればと思います」

彩凪 翔さん

2006年『NEVER SAY GOODBYE』で初舞台、雪組に配属。11年バウワークショップ『灼熱の彼方「コモドゥス編」』に主演。同年『仮面の男』で新人公演初主演。13年バウホール公演『春雷』主演。
出身/大阪府 愛称・しょう、あやか

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
宝塚の情報誌ウィズたからづか

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