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雪組 永久輝 せあ

第103期初舞台生のお披露目となる雪組宝塚大劇場公演は、1957年に封切られ日本映画史に燦然と輝く名作を原作としたミュージカル・コメディ『幕末太陽傳』と、“S”をキーワードに繰り広げるショー『Dramatic “S”!』の2作品を、5月29日まで上演中。 フェアリー的な美貌と立ち姿が凛々しく美しい永久輝せあ。退団公演となる雪組トップスター早霧せいなの近くで学べる幸せを噛みしめ、4度目の新人公演主演に挑む!

4度目の新人公演主演 人情喜劇に挑み自身の殻を破る

 永久輝せあさんは全身でセリフを語るように踊る。ダンスの振りと振りの間が実に饒舌なのだ。2011年4月に初舞台を踏んだ第97期生で研7。雪組トップスター・早霧せいなとトップ娘役・咲妃みゆの退団公演である宝塚大劇場公演、ミュージカル・コメディ『幕末太陽傳』とShow Spirit『Dramatic“S”!』に出演中である。

 「早霧せいなさんに教わったことは数えきれず、退団されるのは本当に淋しいです。最後の瞬間まで早霧せいなさんの近くで学ばせていただける幸せを大切にしたいと思います」

 研7までの生徒だけで本公演通りに演じる新人公演『幕末太陽傳』で、永久輝せあさんは、2015年1月『ルパン三世―王妃の首飾りを追え!―』、2016年2月『るろうに剣心』、同年10月『私立探偵ケイレブ・ハント』に続く4度目の主演に挑む。「2014年に『一夢庵風流記 前田慶次』の新人公演で奥村助右衛門を演じましたから、早霧せいなさんの役をさせていただくのは5度目になります。新人公演初主演のルパン三世役は勢いで何とか演じ終えた感がありますが、『幕末太陽傳』の居残り佐平次役は古典落語を組み合わせた人情喜劇で、コメディセンスはもちろん、密度の濃い芝居心が必要です。今の私自身の殻を破るくらいの勢いで取り組まなければ演じきれないと思っています。また、今回の新人公演では長の学年となり、下級生が力を最大限に発揮できる環境を拵える責任があります。これまでは上級生がやってくださっていたことなので、これからは自分の役をがんばるだけでなく、誰よりも作品を理解して、下級生がもっている良い面を引き出すような提案ができなければ。雪組の同期3人で果たしてどれだけやれるか、責任が重いことを覚悟しています」

 2017年2月、宝塚バウホール公演『New Wave!―雪―』に中心メンバーとして出演した永久輝せあさんは、「まだ自分の中のどこかに受身の感覚が残っていることに気づかされました。私自身が感じたことをしっかり自己発信しないとお客様に伝えられない、そう実感できた貴重な経験をこれからの舞台に生かしていきます」

 その最初の舞台が宝塚大劇場公演『幕末太陽傳』『Dramatic“S”!』なのだ。永久輝せあさんの、湧き上がるエネルギーを迸らせた、目覚ましい活躍から目が離せない。

 永久輝せあさんと宝塚歌劇との出逢いは友人から借りたDVD。初観劇した『ME AND MY GIRL』でナマの舞台の輝きを知り、圧倒された。その後、宝塚音楽学校を受験。「大好きなバレエをずっと続けていましたが、眠っていた感覚を呼び覚まされたようにお芝居好きな気持ちが頭をもたげてきて、今ではお芝居にどっぷり嵌っています。芸談義は何時間やっても尽きることはありません」

 そんな永久輝せあさんが目指す理想の男役像は「目標をもって自分の男役像を確立しなければと思うのですが、実はその類の質問に上手く答えられたことがないんです。女性だからこそ演じられる特別な存在が宝塚の男役です。黒エンビが似合う、スマートでスタイリッシュな男役さんが好きなので、その理想の形を創り上げたい。指先まで神経を行き届かせる繊細さや清潔な色気は、女性が演じるからこそ。男性の動作を参考にしますが、男役のお手本は上級生です。何年もかけて先輩がたが創ってこられたものを学ばせていただき、自分のオリジナルができ上がっていくものだと思います」

 バランスのいい内面も永久輝せあさんの魅力だ。自身が充実した稽古をしていると、人ともいい関係が結べる、と永久輝せあさんは言う。「ライバルは自分です。誰かに勝とうとするのではなく、自分に打ち勝つことだけを考えています」

 永久輝せあさん自身が発光体となって放ち続ける極彩色のメッセージは、一瞬を共有できるナマの舞台で感じたい。

永久輝 せあさん

2011年『めぐり会いは再び』で初舞台、雪組に配属。15年『ルパン三世』新人公演で初主演。16年『るろうに剣心』、『私立探偵ケイレブ・ハント』新人公演主演。17年バウホール公演『New Wave!-雪-』で月城かなとと共にバウ主演。 出身/東京都  愛称・ひとこ、ひとみ

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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