トップページ > 2018年03月号 >フェアリーインタビュー

月組 風間 柚乃

3月12日まで上演中の月組宝塚大劇場公演は、伊吹有喜氏の小説を舞台化したハートウォーミングなミュージカル『カンパニー―努力、情熱、そして仲間たち―』と、ショー・テント・タカラヅカ『BADDY―悪党は月からやって来る―』の2作品。 抜擢に応え堂々とした舞台姿を魅せる風間柚乃、役づくりに心を尽くし、初めての新人公演主演に挑戦!

新人公演ではスーツを着こなし 主役・青柳誠二に挑む

 2月9日に初日を迎えた月組宝塚大劇場公演は、伊吹有喜氏の原作、石田昌也氏の脚本・演出によるミュージカル・プレイ『カンパニー―努力、情熱、そして仲間たち―』と、上田久美子氏の作・演出によるショー・テント・タカラヅカ『BADDY―悪党は月からやって来る―』の2本立てだ。2017年5月に新潮社から発行されたばかりの傑作長編小説を舞台化した『カンパニー』は、愛妻を亡くして生きる意欲を失った青年サラリーマン青柳誠二が、出向先のバレエ団で壁にぶつかりながらも個性的な新しい仲間たちと懸命に生きる姿を描いたバック・ステージ・ミュージカルである。2月27日には新人公演が行われて、第100期生の風間柚乃さんが主役・青柳誠二に挑む。抜擢が続いて飛躍の年だった昨年の勢いのまま、新人公演初主演に臨むのだ。「昨年は本公演で初めて通し役をいただき、地に足をつけてお芝居をする経験ができ、男役としてやっと第一歩が踏み出せたなと感じています。青柳誠二は柔道や書道の猛者で、お手本にしたくなるような日本男児です。誠心誠意、役づくりに心を尽くし、本役の珠城りょうさんが創り上げる男役像に一歩でも近づきたいなと思っています」

 風間柚乃さんは1年前、月組公演『グランドホテル』の新人公演に出演し、初演で涼風真世が演じた余命いくばくもない簿記係オットー・クリンゲライン役を演じて、下級生ながらも生死と向き合う人間の存在感を感じさせた。「いざ役をいただいても、歌やダンスをはじめ舞台上でやらなければならないことが多く、精いっぱいの自分がいて、これではいけないと。お稽古の段階から役の人物として生き続けることの大切さを学びました」

 7月には『All for One~ダルタニアンと太陽王~』でルイ14世の双子の兄弟ジョルジュ役が与えられ、新人公演では本役・月城かなとが演じた敵役ベルナルドを華のある芝居心で魅せた。

 「本公演で1か月間、何度も演じる通し役は、毎回感じることがちがうと分かりました。相手の方の反応もちがっていて、お芝居をする楽しさを一層強く感じました」

 一人っ子で一人遊びが多かった子どもの頃、風間柚乃さんは自然と一人二役を演じるようになったという。たとえばおもちゃのレジスターを触りながら、店員とお客の役を行ったり来たり。「お喋りな子どもだったと思います。映画やドラマを見るのも好きでしたが、なぜか主役より悪役のほうに興味がありました。悪役はお芝居の中で重要な役割を果たしている、魅力的だなあ、と思っていました」

 悪役に惹かれるのは芝居が好きだからに違いない。

 母親の影響で宝塚歌劇を幼稚園の頃から見ていた風間柚乃さん。ここに入りたいと思ったのは、劇場で生の舞台を初観劇した小学6年生の時だ。「受験には何が必要かを調べて、バレエと声楽を習い始めました」

 もともと身体能力はバツグン。小学生のときから短距離走、幅跳び、高跳びの選手だった。「だいぶ男の子っぽかったと思います。私の将来や進路について両親は何も言わず黙って応援してくれましたので感謝しています。どんな男役になりたいかとよく聞かれるのですが、こういう男役になりたいという明確なものがあるわけではなくて、むしろそういうものは舞台の経験値で変わってくるのではないかと思っています。今はとにかく、いろんなことを感じ取って進化していければと。一瞬一瞬を大切に、日々歩み続けていきたいと思います」

 風間柚乃さんへの期待は高まるばかりだが、静寂を湛えたような瞳の色は変わらない。

 見えないところで繰り返し努力を続けている大器の言葉は、どこまでもまっすぐで清々しい。

風間 柚乃さん

2014年『宝塚をどり』で初舞台、組回りを経て月組に配属。17年『グランドホテル』新人公演でオットー役。18年『カンパニー』新人公演で初主演。
出身/東京都  愛称・おだちん、ゆの

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
宝塚の情報誌ウィズたからづか

ウィズたからづかの最新コンテンツ