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星組 極美 慎

秋の星組宝塚大劇場公演は、激動期のベルリンを舞台に、映画を愛した人間たちの姿を、運命的なラブロマンスを織り交ぜながらドラマティックに描いたミュージカル『ベルリン、わが愛』と、90周年を迎えたタカラヅカレビューの伝統を紡ぐ『Bouquet de TAKARAZUKA』の2作品を11月6日まで上演中。 抜群のスタイルで舞台姿が映える極美慎、新人公演主演に挑み、包容力のある骨太な男役を目指す。

100期生の先頭をきって新人公演主演。 『ベルリン、わが愛』でスーツを着こなす

 9月29日、宝塚大劇場で初日を迎えた星組公演はミュージカル『ベルリン、わが愛』とタカラヅカレビュー90周年『Bouquet de TAKARAZUKA(ブーケ ド タカラヅカ)』。宙組公演に続き、オリジナル作品2本立てだ。10月24日に行われる新人公演『ベルリン、わが愛』では、2014年に初舞台を踏んだ第100期生の極美慎さんが、同期生の先頭をきって主演する。「新人公演主演のお話をうかがった直後は不安もありましたが、同期生から激励の連絡をもらい、主演することの重みを実感しました。今は、がんばろうという強い気持ちしかありません」

 ミュージカル『ベルリン、わが愛』は映画を愛する人たちの物語だ。1920年代から30年代にかけてハリウッドと並ぶ映画の都だったドイツ・ベルリン。サイレント映画がトーキーへと移り変わる時代に、ミュージカル映画を製作して大成功をおさめたテオ・ヴェーグマンは、ヒロインに抜擢した無名の踊り子ジル・クラインと恋に落ちる。「本公演でテオを演じていらっしゃるトップスター紅ゆずるさんは、絶対的なスター性をお持ちの方です。私はまだまだ足元にも及ばず、さまざまな男役としての形から稽古を始めなければなりません。私にできる精一杯をやるしかありませんが、役を掘り下げて私なりのテオを演じたいと思います」と、生き生きと話す極美慎さんの熱い思いが眩しい。

 新人公演で主役テオを演じる極美慎さんが着る衣裳は、シンプルなスーツだ。「スーツは2015年に研2で出演した『ガイズ&ドールズ』のギャンブラーの場面以来です」

 豪華な衣装で着飾ったコスチュームプレイに比べ装飾のないスーツ姿で主役の存在感を表現するのは、豊富な舞台経験で培った力量が必要だろう。新人にとってスーツ物はハードルが高いのだ。「紅ゆずるさんからスーツの着こなし方を学びたいです。そのほかにも立ち居振る舞いや間のとり方、目線の使い方、たとえば愛する人を見る目線、仲間を見る目線など、この機会にできるかぎり自分のものにしたいですね」

 映画はよく見る。「男役を学ぶ上で参考になります。男役の魅力を自然な所作で表現できるようになりたいですから」

 最近、タカラヅカ・スカイ・ステージの番組で久しぶりに空手の型を披露した。幼稚園児から中学2年生になるまで空手を習っていたのだ。幼少の頃の極美慎さんは男の子っぽい、やんちゃな女の子だった。「中2で身長がすでに173センチあった私に、宝塚ファンの祖母が、思い出づくりのためにいろんなものをみたほうがいいと、宝塚バウホール公演に連れていってくれました。宝塚歌劇の舞台は男らしくてカッコよくて、輝いている背の高い女性がたくさんいて、素敵だな、私もやりたいなと」

 空手の経験が和物の舞台で生かせることもわかった。2016年『桜華に舞え』に出演したとき、「武道の精神が理解できましたし、剣術も楽しかったです」

 男役に磨きをかけるために普段から心がけていることがある。「手のひらが女性っぽく見えないように、手の動きに気をつけています。私服はラフな格好が好きだったのですが、最近は、かっちりしたものを着るようにしています」

 『ベルリン、わが愛』で極美慎さんが演じる本役は、映画製作会社社長の秘書ボリス・エッフェンベルク。

 「そのほかにもレビューの場面に女役で出演していますので、女性的な魅力も発揮できるよう稽古をしています」と笑みを崩す。長身で、抜群のスタイルの良さが目を引く。

 今後の目標は、「温かくて包容力のある骨太な男役を目指しています。さわやかと言って頂くことがあるのですが、そんなイメージから離れた悪役もやれるようになりたいです」

 瞳に宿る力が一気に心をつかむ。極美慎さんの変幻自在な活躍を楽しみたい。

極美 慎さん

2014年『宝塚をどり』で初舞台、星組に配属。17年『ベルリン、わが愛』で、新人公演初主演。
出身/神奈川県  愛称・しん、カリン

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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