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雪組 縣 千

雪組宝塚大劇場公演は、2000年雪組で初演され絶賛を博した傑作ミュージカルの待望の再演『凱旋門』と、宝塚歌劇ならではの華やかでドラマティックなショー・パッショナブル『Gato Bonito‼』の2作品を、7月9日まで上演中。 早くからの抜擢を受け、キレのあるダンスで存在感を増す縣千。初めての新人公演主演、ラヴィック役に全力で取り組む。

満を持して新人公演主演。 待望の再演『凱旋門』でドイツ人亡命者を演じる

 ファン待望の傑作ミュージカル・プレイ『凱旋門―エリッヒ・マリア・レマルクの小説による―』が18年ぶりに再演され、初演で主演した轟悠が再び主役ラヴィックに扮してかけがえのない命の尊さを語りかけている―。雪組トップスター望海風斗のミステリアスで情熱的な魅力満載のラテンショー、ショー・パッショナブル『Gato Bonito‼~ガート・ボニート、美しい猫のような男~』と共に、雪組宝塚大劇場公演は今、熱い感動の嵐を巻き起こしている。とりわけ『凱旋門』は、ラヴィックの友人ボリス役に扮して男役の奥行きを感じさせている雪組トップスター望海風斗と、宝塚歌劇を代表するスター轟悠との珠玉の共演が、唯一無二の、お宝ミュージカルである。
 時代は、不穏な空気に満ちた第二次世界大戦前夜。ドイツからの亡命者ラヴィックは、女優志願のジョアンに出会い、生きる希望をもち始める。2000年の初演で文化庁芸術祭賞演劇部門優秀賞を受賞した轟悠が「気負いを取り払いつつ、改めて創り直したい」と新たな気持ちで挑むラヴィック役を、6月26日の新人公演で演じるのが第101期生の縣千さんだ。「いつの日か新人公演で主演させていただくことが出来ればと夢見ていましたが、今公演でこのような機会をいただくとは思ってもみませんでした。発表を聞いてから、何よりまず台本に向かいました。ラヴィックの台詞を心から理解してお客様の胸に届けられるように、原作を読み、映画を見て、時代背景をしっかり勉強しなければと思っています」
 2015年、月組宝塚大劇場公演『1789―バスティーユの恋人たち―』で初舞台を踏んだ縣千さんは、同年、『星逢一夜』の新人公演で当時、研5だった永久輝せあが本公演で演じた汐太役に挑んだ。翌年の新人公演『るろうに剣心』では月城かなとが本役で演じた四乃森蒼紫役に抜擢された。その後も『私立探偵ケイレブ・ハント』の新人公演では、彩風咲奈が演じたカズノ・ハマー役、『幕末太陽傳』の新人公演では望海風斗が演じた高杉晋作役を演じてきた。そして、望海風斗の新トップ披露公演『ひかりふる路(みち)~革命家、マクシミリアン・ロベスピエール~』の新人公演では永久輝せあのフィリップ・ル・バを演じ、早くからそのスター性が注目を集めてきた。
 「初観劇は宙組宝塚大劇場公演『TRAFALGAR』『ファンキー・サンシャイン』でした。2階の後方の席で観ましたが、最初の兵隊が走ってくる場面でお芝居に引き込まれ、ショーではずっと泣き通し。感動で胸がいっぱいでした。幼稚園の頃から習っていたバレエを本格的に続けるには身長が高くなりすぎていて、“自分を活かせるのはここだ”と。踊ることは大好きです。踊りで人に何かを伝えるのが本当に好きで。でも今回いただいたラヴィック役はほとんど踊りません。ラヴィックの思いを伝えるのは言葉。今、ラヴィック役を与えていただいたということは、轟さんから私自身がどれだけ学べるか、私自身の決意と努力が問われていると思います」
 小さい頃から興味のあることは徹底してやり切るタイプだ。宝塚音楽学校時代には、それまでピアノを全く習っていなかったため1日2時間、毎日練習し続けた。「2年間続けた結果、成績がかなり上がった時はうれしかったです。チャレンジするのは大好き。自分が納得するまで全力で取り組んでいきます」
 最後尾で踊った研1時代は前列で踊る上級生の姿を見て勉強するのが楽しかった。どんな場所でも光っていたいと、がむしゃらにがんばれた。研4になった今は前列で踊ることも増えた分、舞台の怖さを感じている。一方で、ずっとかわらないことがある。縣千さんはリフレッシュしたくなると踊ってしまうのだ。「誰かが踊っているとそこに加わったり、場所を見つけては好きな曲をかけて好きなように踊り続けます」
 夏空のようにアクティブな美しい男役がかぐわしい足跡を刻みつける、新人公演の幕が上がる。

縣 千さん

2015年『1789』で初舞台。雪組に配属。17年『幕末太陽傳』新人公演で高杉晋作役に抜擢。18年『凱旋門』で新人公演初主演。
出身/京都府  愛称・あがた

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
(株)ティーオーエー代表取締役、現代文化研究会事務局/主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカという夢1914~2014」(青弓社)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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