2020年幕開けの雪組宝塚大劇場公演は、20世紀のアメリカを背景にしたギャング映画を世界初ミュージカル化した『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』を2月3日まで上演中。 幅広い役を演じ、得意のダンスで舞台を盛り上げる諏訪さき。新人公演卒業の学年で、念願の新人公演初主演に挑む。
令和2年の幕開けを飾るのは雪組宝塚大劇場公演、ミュージカル『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』。1984年に公開され、熱狂的なファンを生んだセルジオ・レオーネ監督による傑作ギャング映画を、日本を代表する演出家で宝塚歌劇団座付演出家の小池修一郎氏が世界で初めてミュージカル化した一本もの大作だ。
21日に行われる新人公演で主役ヌードルスに抜擢されたのが諏訪さきさん。2013年に初舞台を踏んだ第99期生である。新人公演を卒業する最後の学年で、念願の新人公演初主演を射止めた。
「お聞きした瞬間は体中の力が抜けました。たくさんの方々の支えがあったから気持ちが落ち込んだ時も夢を諦めたくない思いが上回ってきました。チャンスを与えてくださったことに感謝しかありません」と、澄み切った大きな瞳で話し始める諏訪さきさん。これまで7年間、男役としてさまざまな人物を演じてきた諏訪さきさんの舞台経験が、まちがいなく活かされることになる。「役づくりの引き出しは増やしてきたつもりですが、ヌードルスは奥深くてとても魅力的な人物。どのように演じられるか、責任と不安を感じずにはいられません」
本公演でヌードルスを演じる雪組トップスター望海風斗に、「よろしくお願いします」と挨拶に行くと、拳を握って小さく振り“がんばれ!”と励ましてくれたという。「以前、望海風斗さんに、いつか主演をしたいという私の夢を聞いていただいたことがあります。その時、望海風斗さんは、主役を演じるためには私に何が必要か、という大事なことを教えてくださいました。その言葉を片時も忘れずにお稽古しています」
下級生の頃、尊敬する望海風斗の前では緊張し通しで、話しかけることもできなかった諏訪さきさん。だが2016年2月、雲の上の存在である望海風斗に自ら話しかけるきっかけが巡ってきた。『るろうに剣心』の新人公演で、望海風斗が本公演で演じる加納惣三郎役に抜擢されたのだ。これが諏訪さきさんの転機になる。「『るろうに剣心』は今回と同じく小池先生の演出ですが、研3の私は初めて取り組むことばかりで毎日、怒られていました。でも、あの経験があったから今の自分がいると思います。男役冥利に尽きるヌードルス役で新人公演主演の夢が叶っただけでなく、望海風斗さんのお役をさせていただけることに、この上ない幸せを感じています」
物語のごく前半に、貧しいユダヤ系移民二世の少年ヌードルスが人生を大きく狂わすことになる、ある事件が起きる。少年ヌードルスが敵対するギャングのバグジーを殺害するのだ。「短い場面ですが、本公演でバグジーを演じます。望海風斗さんが少年期のヌードルスも演じていらっしゃるので、舞台で直接ご指導いただけて感無量です」
諏訪さきさんが宝塚音楽学校受験を決意したのは小学生の頃に観た『コパカバーナ』がきっかけだ。さわやかな青年役や紳士役を演じていたトップスターがエネルギッシュに歌い踊る姿に、心を奪われたという。「母が歌劇団OGで宝塚歌劇は小さい頃から身近な存在でした。私自身の意志で宝塚受験を目指してからは、どんなに苦しくても現状から逃げたい、辞めたいと思ったことは一度もありません。今も宝塚歌劇が好きになる一方です」
歴史ある宝塚歌劇の男役として、新たなスタート地点に立った諏訪さきさん。目指す男役像は「ファン時代に観た伝統的な男役の薫りや声色が忘れられません。それを継承できるような男役になりたいです。望海風斗さんから学びたいことは山ほどありまして、台詞を言われる一瞬前の呼吸、歌っていらっしゃる時のからだの使い方、帽子をかぶる時の手の動きなど、なぜそうされるのかなと考えながら、目に焼き付けています」
どこまでもセピア色が拡がる20世紀のアメリカは、諏訪さきさんの情感を刺激し続ける。男役・諏訪さきさんが魂を込めて演じるヌードルスの、誇り高い美しいフォルムが浮かび上がってくる。
2013年『ベルサイユのばら』で初舞台、雪組に配属。20年『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』で新人公演初主演。
出身/京都府 愛称・しゅわっち、くっすー