日本・オーストリア友好150周年記念の年に105周年を迎えた宝塚歌劇団、秋の月組公演は、2017年ウィーン劇場協会が制作、好評を博しロングランを果たした心温まるミュージカル 『I AM FROM AUSTRIA ―故郷は甘き調べ―』 を11月11日まで上演中。 恵まれたスタイルと磨いてきた歌唱力で注目を集める英かおと、最後の新人公演で主役を射とめ、初主演に挑む。
2019年は宝塚歌劇105周年、そして日本とオーストリアが国交を樹立して150周年に当たる。オーストリアそのものを題材にした話題のウィーン・ミュージカル「I AM FROM AUSTRIA」の日本初演が宝塚歌劇団により実現し、10月4日、月組宝塚大劇場公演『I AM FROM AUSTRIA―故郷は甘き調べ―』が初日の幕を開けた。オーストリアの国民的シンガーソングライターであるラインハルト・フェンドリッヒの名曲で綴られた心温まるミュージカルは、私たちの宝塚歌劇への憧れや郷愁をも掻き立てて、何度でも繰り返し観たくなる味わいに満ちている。
10月22日の新人公演『I AM FROM AUSTRIA―故郷は甘き調べ―』で、老舗ホテルの跡継ぎであるジョージ・エードラーを演じるのが、2013年に初舞台を踏んだ第99期生の英かおとさんだ。研7の英かおとさんは最後の新人公演で主役を射止め、初主演に挑む。英かおとさんは初舞台後、組まわりを経て月組に配属になり、本公演のほか宝塚バウホールやシアター・ドラマシティ、全国ツアーをはじめ、様々な公演に出演して舞台経験を積んできた。宝塚大劇場と東京宝塚劇場で行われる本公演以外は組に所属する全員が出演できるわけではない。絶え間ない舞台経験が、男役・英かおとの魅力を押し上げている。
「いろんな公演に出演させていただき、夢中でやってきました。このたび研7で新人公演初主演させていただきますが、何よりも楽しむことが出来ればと思っています。そのように思うようになったきっかけは、『All for One~ダルタニアンと太陽王~』の新人公演でフィリップ役を演じた時に、お稽古も本番も楽しいと初めて感じたことです。それまでの私は、諦めたら終わり、もっとお稽古しなければと、ひたすらレッスンする日々をすごしていました。勿論それも大事ですが、楽しんでいるといろんなことが追求でき、幅も拡がることがわかったのです」
みんなが全力投球する中、誰よりも朝早く劇団に来て基本の発声練習を始める、時間が許す限り劇団レッスンに参加するなど、自らに厳しさを強いてきたという英かおとさん。子どもの頃から真面目な優等生だったのだろうと思いきや、「何をやっても続かず、初めて自分の意志でやりたいと思ったのが宝塚の舞台に立つことでした」と、キレのいい、率直な言葉が飛び出す。「子どもの頃に習っていたクラシックバレエは5年間でやめてバスケットボールを始めました。すると身長がものすごく伸びて、受験に向けバレエのレッスンを再開した時は振り出しに戻ったようでした(笑)」
宝塚歌劇との出合いは強烈なものだった。初めて宝塚大劇場公演を観劇した時、「幕が上がった瞬間、ほかの舞台では感じられなかったときめきを感じ、この舞台に絶対に立ちたい、と思いました」
小さい頃からミュージカルの世界で活躍したいと夢見ていた英かおとさん。声楽とピアノの実力もかなりのものだ。「今は踊る役をたくさんいただいています。役の心を歌で表現しながら、役の人物になって踊るのは意外に難しく、お客様に楽しんでいただける域に達するのはさらにハードルが高いです」と冷静かつ軽やかな口調で打ち明ける。今回、英かおとさんが初主演する新人公演『I AM FROM AUSTRIA―故郷は甘き調べ―』は、主人公の居場所探しをテーマに、珠玉のナンバーにのせて華やかなレビューが繰り広げられる。歌・ダンス・芝居の三要素が絶妙に絡み合っている。
「舞台でソロを歌うのはほとんど初めてに近く、いかにお客様の心に響く歌が歌えるかという課題に挑戦します」という言葉からは、潔く、黙って貫いてきた英スタイルが透けて見える。
注目度が急上昇中。「うれしいですが、なるべく、ふだんと変わらないようにいようと思っています。変わってしまったら、今まで自分は何をしてきたのだろうときっと思うと思いますから」
目指す男役像は「舞台で華があり、お客様から、癒されて元気になれると言っていただける舞台人です」
熱く、誇り高き男役・英かおとさんの挑戦から目が離せない。
2013年『ベルサイユのばら』で初舞台、その後月組に配属。19年『I AM FROM AUSTRIA』で新人公演初主演。
出身/岡山県 愛称・うー