3月11日まで上演中の花組宝塚大劇場公演は、18世紀の水上都市ヴェネツィアを舞台に、稀代のプレイボーイ・カサノヴァの、愛と夢に彩られた冒険を綴るスペクタクル・ミュージカル『CASANOVA』。 バトントワリングでエンターテイメントの心を培ってきた帆純まひろ。恵まれたスタイルと甘いマスクで、ファン待望の新人公演主演に初挑戦!
水上都市ヴェネツィアに生まれ、詩人、作家、聖職者、詐欺師、錬金術師、スパイなど様々な顔をもち、1000人の女性に愛されたという美しいプレイボーイ、ジャコモ・カサノヴァ。謎の多い生涯故に繰り返し映画の題材になってきたが、宝塚歌劇105周年の今年、座付き演出家・生田大和氏による1本物オリジナル・ミュージカルの主役として華麗に甦った。楽曲のすべてをフランスの作曲家ドーヴ・アチア氏が提供。この祝祭喜歌劇『CASANOVA』は2月8日に初日を迎え、26日の新人公演で帆純まひろさんが初主演に挑む。
「新人公演の1番上の学年になったので、下級生をまとめて引っ張っていく責任があります。いつもより少し不安な気持ちで稽古の初日を迎えましたが、さらに初主演というプレッシャーが加わって、何とも言えない緊張感を覚えました。今は素直にうれしい気持ちでいっぱいです」
帆純まひろさんは2013年に初舞台を踏んだ99期生。
「私が花組に配属になった時、明日海りおさんはすでにトップスターで遠い存在でした。その明日海りおさんの役をさせていただける日が来るとは。幼いころから宝塚音楽学校を目指して何年もレッスンを積んだわけではありませんから、常に皆に追いつかなきゃという気持ちでやってきました。いつか新人公演で主演することができれば…と思うようになったのは、いろいろな役を経験させていただいてからでした」
『新源氏物語』『ME AND MY GIRL』『金色の砂漠』『邪馬台国の風』などの新人公演で主要な役が続いた頃、「帆純まひろさんがいつか新人公演に主演できますように」とひそかに短冊に書いてくれた人がいることを耳にして、「私だけの夢ではない、応援してくださる方たちのためにもがんばりたい」という気持ちが生まれたという。「同じ頃、まだまだ実力が無い、及ばない、というもどかしさを感じたことが目標をもつことにつながりました」
うまくいかないときも応援してくれる人たちの心の温かさを感じながら、新人時代をすごした帆純まひろさん。「上級生の背中を見て学び、やがて私自身がこのような男役になりたい、こんな思いを舞台で演じたいと考えるようになりました。そんな時、芯が強く、自分の感性に自信をもって悔いのない人生を生きたカサノヴァという役に出会うことができ、不思議な運命を感じる瞬間があります。個性的な役を多く演じてきた経験を総動員して、人間カサノヴァの心の奥に迫りたいと思います」
帆純まひろさんと宝塚歌劇との出会いはバトントワリングだ。スクールの先生が宝塚の大ファンで、使用する曲も衣裳も宝塚的なものが多かった。技を競う競技大会だけでなく有名なパレードやイベントにも出演する機会があり、拍手をしてくださるお客様の温かさや、舞台への憧れ、演技を披露する喜びなどを知った。帆純まひろさんのエンターテイメントの原点がここにある。
宝塚歌劇を初めて観たのは小学生の時。「舞台上の方たちが楽しそうにしていて素敵だなと、舞台空間の温かさが伝わってきました。バトンの舞台は常にバトンを落とさないようにと緊張の連続なので、すっかり宝塚の舞台に魅了されました。母からは、やりたいと言ったことは途中で投げ出してはいけないと強く言われてきましたので、バトンもやりきるまでやると決め、目標だった全国大会出場を果たし、もう悔いは無いという思いでバトントワリングをやめて音楽学校受験準備に切り替えました。バトンでの経験が宝塚の男役をやる上で活きていますし、私のベースになっていると思います」
演じることが大好きな帆純まひろさん。目指しているのは、どんな役、どんな場面にもきちんと染まれるノーマルで真っ白な舞台人だ。「花組の伝統を学び、心を大切にして背中で語れる男役になりたいです」
万人に愛される至上の美と、誇り高き純真さが、男役・帆純まひろさん演じるカサノヴァに結実する日は近い。
2013年『ベルサイユのばら-フェルゼン編-』で初舞台、花組に配属。19年『CASANOVA』新人公演で初主演。
出身/兵庫県 愛称・せの、ホッティー