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雪組 綾 凰華

2018年の掉尾を飾る雪組宝塚大劇場公演は、ガストン・ルルーの小説「オペラ座の怪人」を題材にし、宝塚歌劇では2004年の初演、その後の再演も好評を博した人気ミュージカル『ファントム』を12月14日まで上演中。 包容力を感じさせ、その凛々しい立ち姿が舞台映えする綾凰華、最後の新人公演では全力でファントムを演じ、また新しいステップに向けて第一歩を踏み出す。

待望の再演『ファントム』の新人公演で エリックの複雑な感情表現を演じきる

 今年の宝塚大劇場の掉尾を飾るのは、三井住友VISAカード ミュージカル『ファントム』。ガストン・ルルーの小説「オペラ座の怪人」をもとに、アーサー・コピットの脚本、モーリー・イェストンの音楽によりミュージカル化されたのが1991年。その後、ドラマチックな宝塚版『ファントム』が2004年に宙組で初演され、このたびファン待望の4度目の上演が、トップスター望海風斗率いる雪組により実現した。
 層の厚い雪組メンバーによる平成最後の『ファントム』は、新たなきらめきを放ち、ロマンチックで感動的な人間ドラマに仕上がっている。11月27日に行われる新人公演で主役ファントムを演じるのが、2012年に初舞台を踏んだ第98期生の綾凰華さんだ。
 「『ファントム』はファン時代に花組の蘭寿とむさん主演の舞台を観ていました。すばらしい作品で2度目の新人公演主演をさせていただくことになり、プレッシャーを感じる暇もないほどお稽古に没頭しています」
 綾凰華さんが新人公演で望海風斗の役を演じるのは3回目だ。最初は研6で星組から雪組に組替直後の新人公演『ひかりふる路~革命家、マクシミリアン・ロベスピエール~』のロベスピエール役。「もう下級生とは言えない立場で雪組生になり、まだ一度もお話をしたことがない人たちが沢山いらっしゃる中で新人公演初主演に挑戦させていただきました。望海風斗さんには、ここまで教えていただいていいのだろうかと思うほど、たくさんのことを教えていただき、おかげで自分のことだけをやればいいのではなく、周りの存在を感じることの大切さを学ぶことができました」
 2回目はラヴィックを演じた専科の轟悠とボリス役の望海風斗が数々の名場面を残した『凱旋門―エリッヒ・マリア・レマルクの小説による―』の、新人公演。「具体的なアドバイスの言葉だけでなく、役づくりをされる過程や舞台での姿から教えていただくことが多くて、吸収したいことがいっぱいありました。エンジンがかかりっぱなしの私に、『しっかりお稽古したあとは、本番を楽しめばいいんだよ』と。今回も、精いっぱいお稽古して本番を楽しみたいです」
 パリのオペラ座の地下に住む、仮面をつけた怪人エリック。「エリックは純粋な子どもがそのまま大人になったような印象を受けますが、子どもっぽい役づくりをするのではなく、これまで培ってきた男役の在り方を活かし、複雑な感情表現をしっかり演じたいと思います」
 ただ一人、自分を愛してくれた母親にそっくりな歌声をもつ娘クリスティーヌを愛するが故に、次々と事件を起こしてしまう。「ネガティブな人というより、音楽を愛する心の温かい優しい人。絶望を抱えながら懸命に生きていると思うので、この作品を演じさせていただくに当たり、作品のテーマをきっちりとお客様にお届けできるようにしたいです。みんなと一緒により良い舞台づくりを目指してがんばります」
 研7の綾凰華さんにとって、これが最後の新人公演になる。「初めての新人公演は必死すぎて、気づいたら終わっていました。ずっと先のことだと思っていた新人公演卒業の日が今、目の前にきています。他組の同期生が次々と新人公演を卒業していく中、集中してエリックを演じ終え、新しいステップに向けて第一歩を踏み出したいと思います」
 その時、新しい景色が眼前に広がるはず。
 最近、切り替えスイッチの上手な使い方を覚えた。「時間をかけて粘り強く取り組むのが長所だと思っていたのですが、意外と短時間でやるほうが集中度が高いことがわかりました。趣味のドライブと料理づくりで気分転換しています」
 快活に跳ね回る小鹿のような肢体と、包容力を感じさせる落ち着いた大人の男のムード。どちらも男役・綾凰華の持ち味だ。色鮮やかな万華鏡を覗き見る楽しみを与えてくれる。

綾 凰華さん

2012年『華やかなりし日々』で初舞台。その後、星組に配属。17年、雪組へ組替え。同年『ひかりふる路』新人公演で初主演。
出身/兵庫県  愛称・あやな

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
(株)ティーオーエー代表取締役、現代文化研究会事務局/主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカという夢1914~2014」(青弓社)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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