最近、20代から30代で子宮内膜症になる女性が増えています。子宮内膜症とは、子宮内膜に似た組織が、何らかの原因で子宮の外側や卵巣、膀胱、腸、腹膜などにできてしまう病気です。そして増殖した部位でも月経周期に合わせて「増殖」「はがれ落ちる」という状態を繰り返すのですが、 通常の子宮内膜の月経血は膣から体外に排泄されるのに対し、それ以外で起こった出血には出口がないため、血液がたまってしまい炎症や癒着を起こしてしまうのです。初期はなかなか気づかれないことが多いのですが、月経を繰り返すたびに進行し、痛みも強くなってきます。主な自覚症状は月経痛、骨盤痛などを含めた下腹部の痛み、排便痛や便秘、性交痛などで、放置すると不妊症の原因にもなります。
子宮内膜症の原因は、初潮年齢が下がる一方で晩婚化、少子化の傾向が進み、その結果、一生のうちの月経回数が増えたことにあると言われています。例えば明治時代の女性であれば、初潮とほぼ同時に結婚し、何人もの子どもを産んで、妊娠、出産、授乳を繰り返していましたので、一生のうちで月経は40~50回程度しか経験していなかったと思われます。ところが、現代女性は、子どもを産んでも一人か二人が大半で、月経が中断されることがほとんどないため、生涯に経験する月経は400回ともいわれます。月経回数が多ければ、それだけ子宮内膜症にかかるリスクも高くなるわけです。
治療は、鎮痛剤、ホルモン療法、漢方療法、手術療法などさまざまですが、進行の度合い、妊娠を希望するかどうかを考慮し、その方の状況に応じて選択します。
子宮内膜症は進行するばかりで、放っておいて症状が良くなることはありません。月経痛が年々ひどくなる方、以前より鎮痛剤の量が増えた方は、受診を先延ばしにせずお早めに専門医にご相談ください。