年内の完成を目指し、境内に新しい休憩所を建設中の清荒神清澄寺。夏は涼し気に鯉が泳ぐ史料館横の池苑と水を湛える史料館前の水盤が涼を呼びます。戦前、日本美術・工芸に優れた美術家に帝室技芸員と称された地位が帝室(皇室)より与えられ、戦後は重要無形文化財制度に引き継がれ、新たに芸能分野(歌舞伎・文楽・舞踊など)が加えられた人間国宝。帝室技芸員から人間国宝への流れとともに練達の技をじっくり味わうことができます。
空調の効いた史料館内に入ると左手に歌舞伎俳優で人間国宝・十五代目片岡仁左衛門(片岡千之助との連獅子/平成23年)と七代目尾上菊五郎(助六/昭和49年)の隈取が掛けられ、和の世界に引き込まれます。練達の技を魅せてくれるのは、清水卯一の渋い味わいの「灰釉茶碗」など人間国宝の作品と、帝室技芸員・香取秀真の美しいフォルムの「雙鳳文花瓶」、そして右手に展示されている帝室技芸員・初代諏訪蘇山の美しい青磁の花入れや人間国宝・三輪休和、十一代三輪休雪の萩焼の作品なども奥深い魅力を醸し出しています。
人間国宝・黒田辰秋の赤漆の茶筒「赤漆四稜茶器」は流れるようなユニークな形と鮮やかな赤が目を引き、人間国宝・十三代今泉今右衛門の藍が美しい真四角の「色鍋島浪芦文香合」は内部のモダンな絵付けにも注目してほしい逸品。短冊に書かれた歌舞伎俳優・二代目尾上松緑の句、舞踏家・六世藤間勘十郎の色紙「水仙図」はともに人間国宝の貴重な作品です。
陶芸家・荒川豊藏の作品は1点のみですが、藍の染付「染付松竹梅絵茶碗」(有田・今右衛門窯)も見逃がせません。練達の技を心ゆくまで鑑賞してみてはいかがでしょう。