朗読家・ナレーター 荻野恵美子さんと観る 「鉄斎―青緑山水の時代―」

朗読家・ナレーター  荻野恵美子さんと観る 「鉄斎―青緑山水の時代―」

 芸術文化を楽しむには絶好のシーズンがやってきました。大銀杏や楓の紅葉が見ごろを迎える清荒神清澄寺の境内では11月19日にお茶席(野点)が設けられ、鉄斎美術館では彩色鮮やかな鉄斎の青緑山水を紹介する展覧会が9月12日から開催されています。  古事記の朗読を続けている宝塚市在住の荻野恵美子さんと「鉄斎―青緑山水の時代―」前期展示を鑑賞、よく知られる水墨山水とは違った鉄斎の色彩感覚に触れ、鉄斎が発信するメッセージに耳を傾けました。

表現者としての姿勢に 心動かされる

 「日本の神話」をラジオで朗読する機会があり、それをきっかけに「古事記」の朗読を続けていて、山水画の精神世界に興味を持っています。私の中で、鉄斎は奔放な水墨山水の画家というイメージだったのですが、青緑山水を観て色彩感覚豊かで、とても美しく驚きました。それらの画には鉄斎が伝えたいメッセージが包含されていて、それは今の世に遺しておきたい貴重な言葉のような気がします。

 私も言葉に込められた意味を伝えようと自分の思いを込めて朗読をしており、心が動かされます。

 六曲一双からなる屏風「青緑山水図」は青緑山水の名品です。右隻に神聖で豊かな水、左隻に緑の山々が描かれ、自然の偉大さ、雄渾さに圧倒され見入ってしまいます。賛に書かれている自作の詩は訓読を声に出してみたくなりました。中国の古典に学んだ鉄斎が漢文壇の凋落を嘆き、「自分が遊戯に画を描くのは、やらないよりましである。そこで画家の真似をしている」という詩ですが、鉄斎の画を描く姿勢にとても共感を覚えました。

 鉄斎は自分を画家ではなく学者であるとしていたからでしょうか、展覧会活動とは距離を置いていたということです。が、晩年になり高島屋美術部の展覧会に出品する機会を得て多くの青緑山水の名品を遺しています。

 展覧会出品作でもあった「東瀛三神山図」(写真・荻野さんの右後方)は、鮮やかな緑青と楼閣に施された朱色との対比が美しい素敵な作品です。
 中国において水墨山水に先駆け、描かれていた青緑山水という伝統的絵画の精神を後進に伝えるべく、亡くなる89歳まで出品したとお聞きし、表現者としての鉄斎の強い意志に感服しました。

 後期には傑作、「富士山図」(六曲一双屏風)が出品されるので期待したいです。

朗読家・ナレーター  荻野恵美子さんと観る 「鉄斎―青緑山水の時代―」

荻野恵美子・大阪市西区にて「株式会社ことだま」を設立。ナレーターとして活動する一方で日本の神話「古事記」の朗読をライフワークとして続け、2017年1月長岡天満宮新春特別奉納、4月兵庫県・西オーストラリア州提携35周年記念使節団としてパースで古事記朗読、そのほか、2015年よりは定期的に清荒神清澄寺清邦文化会館にて太鼓奏者やピアニストとのコラボレーションによる「古事記朗読会」も開催している。宝塚市在住

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