明治時代における 香川県の銅版画 堀家 敏功

発行日   2014年(平成26年)10月
著 者   堀家 敏功
発行者   岡 達也
発行所   あさひ高速印刷株式会社
印刷・製本 あさひ高速印刷株式会社
定価    本体1700円+税
A4判(横型)68頁 並製本

1999年に「熊野古道を歩く」を著し、好評を博した堀家敏功さんが、15年後の2014年10月、「明治時代における香川県の銅版画」を上梓した。  香川県にある曾祖父宅を描いた銅版画の存在に興味を持ち、そのルーツを調査、「日本博覧図」に掲載されていることを知り、香川県の銅版画として一冊にまとめた。

 表紙を飾るのは、本書に銅版画が収録されている四国霊場八十八カ所巡礼七十番札所・本山寺の切り絵で香川県出身の切り絵作家・寒川幹子さんの作品。

 ページをめくると巻頭には讃岐富士と呼ばれる美しい飯野山のカラー写真が掲載され、目を引く。収められている銅版画は香川県の14寺社、13の個人宅、商工関係2物件、その建物の背景に香川県を代表する讃岐富士や瀬戸内海に浮かぶ小島が描かれている。

 著者の堀家さんが本書を刊行しようと思ったきっかけは、香川県の曾祖父宅にあった自邸の銅版画。そのルーツを調べる中で、明治期に関東を中心に銅版画集「日本博覧図」として販売されていたことを知り、埼玉県立文書館を介して、香川県の銅版画は明治28年、29年に制作され、東京の精行社(京都出張所)から発行されたことが分かった。「日本博覧図」が保存されている博物館に出向き、「日本博覧図十二編」に曾祖父宅(堀家嘉造邸)の銅版画と同じ版画が掲載されていることを確認、写真に収め持帰ったところ、本書の「はじめに」にも書かれているように「細密に描かれた建物のほか、飯野山や瀬戸内海、さらに縁起や和歌などが書かれていることにも興味を持った」。そして香川県の銅版画29点は一冊にまとめられることになった。

 「博覧図の概要」「画工・彫師について」や「なぜ銅版画が香川県にあったのか」なども検証され、わかりやすくまとめられている。収録されている明治期の旅館(花びし)や養蚕会社(西讃製糸株式会社)、個人病院(松岡病院)、個人の邸宅、添えられた縁起や和歌、また銅版画に描かれた人物からは当時の風俗なども知ることができ、歴史的に価値のある、貴重な資料となっている。

 今もお遍路さんが巡礼する札所9ヶ寺と他5ヶ寺社には現在の写真と説明文が掲載されているので身近に感じることができ興味が深まる。

 堀家さんは香川県の貴重な財産として、この銅版画を保存し検証するためにも博物館や教育委員会などの協力を得て、香川県の歴史を伝える本として改めて刊行できれば、と次なる期待を込めて「あとがき」を結んでいる。
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