西の谷に爽やかな風が流れる初夏の清荒神清澄寺。史料館では花をテーマにした「花めく季節」展が開催されています。古来より人は四季を彩る花々を愛で、心の安らぎを得てきました。史料館では初夏から夏にかけて咲く様々な花を描いた茶道具や書、絵画などが展示され、観る者の心を晴れやかにしてくれます。梅雨の合間のひととき、ふらっと訪れてみてはいかがでしょう。
日本の四季を彩る花々。春は桜を愛でる「お花見」で日本中が賑わいますが、奈良時代を起源とする「花見」は早春に芳しい香りをたなびかせる梅の鑑賞だったと言われます。荒川豊藏の作品では、白梅があしらわれた「鼠志野梅絵茶碗」や「黒織部梅花香合」はその深い味わいに心惹かれます。天下の銘木、美濃根尾谷の淡墨桜を描いた豊藏の「色絵千古の桜鉢」は桜が鉢の内側にも華やかに描かれ、艶やかで美しく、日本の春を謳歌しているようです。椿や牡丹、蘭の他、桜と紅葉をあしらった珍しい「雲錦手焙」(小形の火鉢)等々、荒川豊藏作品は8点が展示されています
永楽即全の作品で撫子を描いた平茶碗、白地に金で牡丹を描いた煌びやかな「白地金襴手牡丹唐草茶碗」も鮮やかさが目を引きます。杜若の名所、愛知県の八橋から杜若は八ツ橋とも言われ、高橋道八 作「黒釉八ツ橋之画茶碗」や川端近左 作「八ツ橋蒔画大棗」は杜若の美しい色合いと橋を配した構図がモダンな感じさえあたえています。
また書画では、清澄寺先代法主・光聰和上の力強い書「花」、日本画家・千住博の「夜桜満開」、洋画家・脇田和の「花卓」も見ごたえがあります。