山伏や雅楽も加わる華やかな法要「初三宝荒神大祭」が終わり、立春を過ぎると清荒神清澄寺の境内にも春の光が差し込み、池を泳ぐ錦鯉の姿がこころなしか軽やかに見えてきます。池苑の横にある史料館では、干支に因んだ「酉年を祝う」が開催され、吉兆のしるしとして古くから描かれている鳥をテーマにした美しく華やかな作品が並びます。
史料館に入ると、壁面に飾られた掛幅が目に入ってきます。雌雄の鶏と雛が鮮やかに描かれた今尾景年の「牽牛花鶏図」と対照的ともいえる淡い色調の静謐な「花鳥図」。歌舞伎俳優・十五代目市川羽左衛門の作品です。楽弘入の「黒茶碗」銘 友千鳥、柳に燕を絵付けした楽惺入の「赤茶碗」、そして羽ばたく鳥が金で描かれている美しい永楽和全の「仁清写宝尽し茶碗」など今年の新春にふさわしい名品も見逃せません。
右の壁面に目を移すと昭和期に活躍した洋画家、脇田和の温かみのあるどこかメルヘンチックな「風と共に来る鳥」。その下には荒川豊藏の作品五点が配されていて、大ぶりの茶碗二点、白鶴が浮かび上がる「鼠志野鶴絵茶碗」、姫路城に因んで制作された「志野茶碗」銘 翔鷺、また赤の地に鷺が飛ぶ「赤絵鷺之図鉢」はどれも存在感を放っています。絵画にも秀でていた豊藏が花鳥を絵付けした皿や花入れも見るものを楽しませてくれます。
そのほか、鱗鶴があしらわれた棗や鳳凰を配したきらびやかな香合など酉年にふさわしい名品の数々に出会えるまたとない機会です。春の気配が感じられる史料館にでかけてみませんか。