開館8周年を迎えた清荒神清澄寺境内の「史料館」。12月28日まで、千利休の時代より千家に出入りし茶道具の制作に携わる「千家十職」の様式美を伝える名品が展示されています。
師走の27日、28日に納荒神を迎え、大晦日、元旦と多くの参詣者で賑わう清荒神清澄寺。境内にある史料館では、400年にわたり三千家(表、裏、武者小路)を支えてきた工芸の匠「千家十職」の名品を観ることができ、しばし茶の湯の世界に浸ることができます。
千利休の茶風を受け継ぐ千家の歴史とともに歩んできた十の「職家」とは、千家好みの茶道具を制作できる茶碗師・釜師・塗師・指物師・金物師・袋師・表具師・一閑張細工師・竹細工師・焼物師で、天保11年(1840)の利休250年忌の頃に、ほぼ現在と同様の顔ぶれとなり、明治期には「千家十職」が確立されたと言われています。
館内には十職全員の作品19点が展示され、金地に鮮やかな絵付けの永楽即全の「仁清写柳橋茶碗」や糸目が美しい大西浄長の釜が目を引きます。千利休は独自の美意識を持ち、道具を選んだといい、初代楽吉左衛門の茶碗を好みました。展示されている楽了入、楽弘入、楽覚入の楽茶碗はそれぞれに趣のある作品です。茶碗の他に竹細工師・黒田正玄(13代)の棗「白竹張雪吹」や一閑張細工師・飛来一閑(11代)の「青漆朱四方食籠」、かつては必ず茶席に出されていた煙草入やキセルなど。壁面には表具師・奥村吉兵衛が仕立てた即中斎筆の書幅が掛けられています。千利休によって伝えられた茶の湯、その心とともに茶道具の美を堪能することができるまたとない機会といえます。