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花組 綺城ひか理

宝塚大劇場2016年の掉尾を飾る花組公演は、日本ならではの風雅な趣をテーマに繰り広げる舞踊絵巻『雪華抄』と、架空の古代世界を舞台に描き出される愛と憎しみの壮絶なアラベスク『金色の砂漠』の2作品を12月13日まで上演中。 長身ですっきりとした舞台姿が映える綺城ひか理。男役としての演技の幅を広げ、さらなる魅力が開花、2度目の新人公演主演に挑戦!

新人公演で主演。 砂漠の国の王女に仕える奴隷役に挑戦

 2016年の宝塚大劇場の掉尾を飾る花組公演『雪華抄』『金色の砂漠』が、11月11日に初日の幕を上
げた。29日に行われる新人公演『金色の砂漠』で主役を演じるのが綺城ひか理さん。新人公演に初主演した『ME AND MY GIRL』は1幕と2幕を分け合うダブル主演だったが、今回は単独で主役に挑戦する。「前回のビル役に全身全霊で取組みましたので、今回はその時の自分を超えるという新しい課題に挑みます」

 『金色の砂漠』は宝塚歌劇団座付き演出家・上田久美子氏によるオリジナル作品だ。舞台は架空の古代王国。トップスター明日海りおが演じるのは王女タルハーミネの奴隷ギィ。

 「ギィは胸の内に熱い誇りを滾らせています。ギィと王女タルハーミネが初めて結ばれるシーンは涙なしでは観られません。お芝居の魅力が最大限に堪能できる作品なので、一人の人間を演じ切るというむずかしさに挑戦する幸せを感じつつ、お芝居をする醍醐味を味わえる領域まで到達できることを目指してがんばりたいと思います」

 主役が奴隷、というのは宝塚歌劇の常識を覆す設定だろう。それゆえ新鮮な感動と美しさで観客を魅了する意欲作、大いに興味をそそられる。「お稽古場では、明日海りおさんの深い演技に見入ってしまいました。新人公演で自分が演じると思うと不安もありますが、これまでもピンチはチャンスと自分に言い聞かせ前を向いてがんばってきました。チャンスは絶対に生かさなければならない責任があると思いますし、チャンスを生かせなければ逆にピンチに陥りますので、その意味でも今は崖っぷちに立っていると思うので命を賭けて取組みます」

 綺城ひか理さんは2011年に初舞台を踏んだ第97期生。引き締まった甘い顔立ち、176センチの長身。恵まれた容姿がまぶしい研6の男役スターである。4歳からエレクトーン、6歳からヒップホップ、タップ、ジャズダンスなどのレッスンをしてきた。「私は舞台に立っている時が1番輝いているなと両親が思ってくれたようで、母が宝塚への道を勧めてくれました」

 綺城ひか理さんが研3で出演した宝塚バウホール公演『フォーエバー・ガーシュイン―五線譜に描く夢―』の稽古中のこと、タップダンスを踊るシーンで水を得た魚のように踊り始めた綺城ひか理さんに周囲から驚きの視線が集まった。その時、綺城ひか理さんは初めてタップは自分の特技なんだと気づいたという。舞台で披露する機会はまだないが、けん玉も特技の一つだ。「子どもの頃、伝統的な技を教えてくれる地域の催しがあり、けん玉教室に参加しました。しばらく忘れていたのですが、久しぶりにやってみるとすごく楽しくて」

 シアター・ドラマシティ公演『風の次郎吉―大江戸夜飛翔―』に錦吾郎役で出演した研4のとき、大先輩との芝居を通して役にしっかりと感情を入れることを学んだ。続く宝塚大劇場公演『カリスタの海に抱かれて』の新人公演では初めて荒々しいタイプの役を演じ、男役としての演技の幅を広げた。その後も一作品毎に、さらなる魅力を開花させていく綺城ひか理さんの活躍から目が離せない。

 「作品の重要な役割を担っていきたい思いはありますが、自分だけを見てもらいたいのではなく、その作品に貢献できる役者でありたいと思います」

 なくてはならない隠し味をもった役者になるのが理想だそうだ。

 『金色の砂漠』と同時上演の宝塚舞踊詩『雪華抄』は、最近では数少なくなった日本物ショーである。

 「自分の中にある、“日本の心”にワクワクしています」

 その高揚感が観客の胸を優しく震わせる。

綺城ひか理さん

2011年『めぐり会いは再び』で初舞台、花組に配属。16年『MEAND MY GIRL』で新人公演初主演。
出身/千葉県  愛称・あかさん、あかちゃん

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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