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月組 美園さくら

2017年の幕開けを飾る月組宝塚大劇場公演は、ベルリンの高級ホテルを舞台に繰り広げられる人間模様を描いたミュージカル『グランドホテル』と、日本初のレヴュー『モン・パリ』誕生から90周年を記念しておくる『カルーセル輪舞曲』の2作品。 美声で注目を集める新進娘役の美園さくらが、月組トップスター・珠城りょうの宝塚大劇場お披露目公演を華やかに盛り上げる。

『モン・パリ』誕生90周年を記念する レヴューで麗しき歌声を披露

 2017年1月1日、新トップスター珠城りょうが率いる新生月組披露公演『グランドホテル』『カルーセル輪舞曲』が宝塚大劇場で初日を迎える。1989年にトミー・チューン氏の演出・振付によりブロードウェイで幕を開けた『グランドホテル』を、トミー・チューン氏と岡田敬二氏との共同演出により宝塚で上演したのが1993年。23年の時を経て、第69回トニー賞の特別功労賞を受賞したトミー・チューン氏を特別監修に迎え装いも新たに宝塚バージョンの『グランドホテル』が舞台に蘇る。
 「映画や初演の宝塚版など、いろんな『グランドホテル』の映像を見て、お稽古に臨みました。今回は新しい特別な場面も用意されていますので、ぜひたくさんのかたにお楽しみいただきたいと思います」

 『グランドホテル』に電話交換手役で出演する美園さくらさんは、2013年に初舞台を踏んだ期待の新進娘役。首席で入団後、1年間の組回りで『ベルサイユのばら―フェルゼン編―』『風と共に去りぬ』などの大作に出演し、宝塚歌劇が100周年を迎えた2014年に月組配属。新人公演初ヒロイン役は2015年4月『1789―バスティーユの恋人たち―』のマリー・アントワネットである。「マリー・アントワネット役はお芝居をすることの大切さに気づかせてくれた忘れられない役です。自分の中でそれまで練習してきた歌い方を一旦すべて崩して取組みましたので、根本を変えてしまうような戸惑いがありましたが、結果的には歌もお芝居も幅が広がるきっかけになりました」

 2016年10月、宝塚バウホール公演『FALSTAFF~ロミオとジュリエットの物語に飛び込んだフォルスタッフ~』のヒロイン、ジュリエット役を演じたばかり。「ジュリエットは若干14歳という設定なので声のトーンを高めにしました。近年宝塚で上演された『ロミオとジュリエット』とは印象がずいぶん違うかと思いますが、お客様に少しでも古典の魅力をお伝え出来たらという思いで臨みました」

 主役のフォルスタッフを演じたのは専科の星条海斗。「星条海斗さんがお芝居を創り上げる過程をごく間近で見られたのは貴重な経験でした。ご自分と役とを一瞬のうちに近づける瞬発力がすごくて勉強になりましたし、ロミオ役の暁千星さんにもアドバイスをいただきました。お二人なくしてはジュリエット役を演じ切れなかったなと感謝しています」

 幼い頃から宝塚歌劇を観劇していた美園さくらさんが宝塚音楽学校受験を決意するきっかけになったのが、中学2年の時に観た雪組公演『エリザベート―愛と死の輪舞―』。「直感としかいいようがないのですが、私はここに入りたい!という思いが観劇中に湧き上がってきました。でもそれまで机に向って勉強ばかりしていたので、まさか本当に合格できるとは思いませんでしたが」
実は美園さくらさんの特技は数学。「でも母が音楽に携わっていたので、常に音楽が流れている家庭環境で育ちました」

 同時上演の『カルーセル輪舞曲』では、美園さくらさんの比類なき美声にも注目したい。日本初のレヴュー『モン・パリ』誕生90周年を記念して創られたオリジナル・レヴューだ。「パリを出発して日本まで世界を巡るバラエティ豊かな場面の連続ですから、国々のカラーをはっきり出したいと思います。お芝居もショーも作品の良さを伝えることを第一に考えたいですね。そして、宝塚らしい華やかで、男役さんに寄り添える娘役を目指します」

 明晰な頭脳と大らかさが同居する、稀有な才能の開花時期が確実に近づいている。

美園さくらさん

2013年『ベルサイユのばら』で初舞台、月組に配属。15年『1789-バスティーユの恋人たち-』で新人公演初ヒロイン。16年バウホール公演『FALSTAFF』でジュリエット役。
出身/東京都  愛称・さくら、さくさく

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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