宝塚大劇場花組公演は、1937年ロンドンで初演されロングランを記録した大ヒットミュージカル『ME AND MY GIRL』を6月6日まで上演中。1930年代のロンドンを舞台に、下町で育った名門貴族の世継ぎの青年が一人前の紳士に成長するまでを、恋物語を絡めて描いたロマンティックコメディ。 理想の男役を目指し、たゆまぬ努力を続ける実力派、優波慧。初めての新人公演主演で、心をこめてビルを演じる。
4月29日に幕を開けた花組公演『ME AND MY GIRL』が、6月6日まで宝塚大劇場で上演中。『ME AND MY GIRL』を一度でも観たことのある人なら、前奏を聞くだけでハッピーな心地に包まれるはず。1937年にロンドンで初演され1646回のロングランを記録した大ヒットミュージカルである。宝塚歌劇では1987年に月組により初演され、再演を重ねてファンを増やし続けている。
その大作、『ME AND MY GIRL』の新人公演では、第一部と第二部で役替わりが行われることとなったが、宝塚大劇場公演の第一部(東京宝塚劇場公演では第二部)で主役のビルを演じるのは2010年に初舞台を踏んだ第96期生の優波慧さんだ。今回が新人公演初主演だが、これまでの新人公演でも重要な役を数々演じてきた。
「私が宝塚音楽学校に合格した春に大劇場で上演されていたのが月組公演『ME AND MY GIRL』でした。その新人公演で主役のビルを演じられていたのが今の花組トップスター明日海りおさんです。まさか自分が『ME AND MY GIRL』の新人公演でこのような大役を演じさせていただけることになるとは想像もしていませんでした。大劇場公演では第一部、東京宝塚劇場公演では第二部においてビル役を演じる機会をいただくことが出来、光栄でとても幸せです」
優波慧さんは、明日海りおが月組から花組に組替え後に初めて開催したディナーショーにも出演している。「男役としてたくさんのことを教えていただきました。それからは新人公演のたびにアドバイスをいただき、心から尊敬しております」
今回のビル役を役作りする上では、稽古中の明日海りおの姿を穴のあくほど見続けたそうだ。「ビルは人間が温かくて自由奔放で誰からも愛される青年です。男役として理想の人物を演じると思うと緊張しますが、緊張する間もないほど集中できたらいいなと思っています。新人公演でビルを演じた経験が男役としての成長につながるように、日々感性を磨き、いいものをたくさん吸収して、人を愛することが大好きなビルを、心をこめて演じたいと思います」
宝塚歌劇に出会ったのは運命、と優波慧さんは言い切る。女子高のミュージカル部で活動していた時、『エリザベート』を上演することになり、DVDで初めて宝塚歌劇を見たのが運命の出会いだった。「すぐに、はまってしまいました」。東京宝塚劇場で観られることがわかると、学校帰りにチケットを買い花組公演『ファントム』を1人で観劇した。「感動して、幕が下りても席から立ち上がれないほど号泣しました。高校2年で部活動が終了すると宝塚のことしか考えられなくなり、いてもたってもいられず、宝塚受験を
めざしました」
首席で入学。優波慧さん自身は、「同期生のレベルの高さに圧倒され、必死にレッスンを続けました」と音楽学校時代を振り返る。入団後も劇団レッスンを欠かさず続けている。「スターと言われるようになり、舞台の前列で踊れるようになっても、劇団レッスンを黙々と積み重ねていらっしゃる上級生の姿をたくさん見てきました。私もそんな方々を見習って、たくさんの努力を続ければ夢が一つずつ叶うんだという見本になれたらうれしいです。ビル役を演じさせていただくことが決まってから、周りの方々が温かい言葉をかけてくださいます。言葉の中身をしっかり受け止めて、吸収し、糧にして成長していきたいと思います」
わけあって下町で育った名門貴族の世継ぎビルは、心温かな人たちとの交流を経て一人前の紳士に成長し、恋人サリーとの愛を貫く。理想の男役への道をまっしぐらに駆け上る優波慧さんの勇姿に期待がかかっている。
2010年 『THE SCARLET PIMPERNEL』で初舞台、花組に配属。16年『ME AND MY GIRL』で新人公演初主演。
出身/東京都 愛称・ゆーなみ、おにい、けいちゃん