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月組 暁 千星

トップスター龍真咲のサヨナラ公演となる月組宝塚大劇場は、戦国乱世の下天を華々しく駆け抜けた織田信長の生涯を描いたロック・ミュージカル『NOBUNAGA』と、愛をテーマに綴るシャイニング・ショー『Forever LOVE‼』の2作品を、7月18日まで上演中。 抜擢に応え舞台で華やかに輝く暁千星、新人公演では織田信長に挑戦!

新人公演では、夢を持って突き進む 芯の強い信長を

 宝塚大劇場月組公演『NOBUNAGA〈信長〉―下天の夢―』『Forever LOVE‼』新人公演で、主役の織田信長を演じるのは、2012年に初舞台を踏んだ第98期生の暁千星さんだ。宝塚音楽学校を首席で卒業し、阪急阪神の初詣ポスターモデルにも選ばれたことのある暁千星さんは、新人公演の主役に抜擢されたのも早く、2014年4月『明日への指針―センチュリー号の航海日誌―』のジェイク役を研3で演じた。「終わったあと、次の新人公演で役をいただけるとは思えませんでした」と当時を振り返るが、同年10月『PUCK』の新人公演では珠城りょうが演じたボビー役を与えられ、2015年5月『1789―バスティーユの恋人たち―』の新人公演では、再び主演。さらに同年9月、宝塚バウホール公演『A–EN【ARI VERSION】』でバウ・ワークショップ初主演も経験した。「たくさんの役を与えていただき、その一つひとつの経験を活かして少しでも成長していなければいけないと考えています。大切にしているのは、役の想いを伝えること。私自身の個性からかけ離れていると思うような役をいただくこともありますが、その時は新しい自分を出せるチャンスと捉え、役作りしています」

 暁千星さんの挑戦はさらに続く。2015年12月、『舞音―MANON―』の新人公演で暁千星さんに与えられたのは、本役の珠城りょうが新たな魅力を見せたファン・チ・クオン役。「私にとって初めての悪役でしたが、やってみるとアクの強い役は魅力的で面白く、演じていて、とても楽しかったです」

 2016年3月に始まった全国ツアー公演『激情―ホセとカルメン―』で暁千星さんは、闘牛士のエスカミリオ役を演じ切った。「これまでは上級生とのお芝居をたくさん経験させていただきましたが、下級生にも重要な役がつくようになり、『激情』では私が長で下級生と組む場面を初めて経験し、下級生をどう引っ張っていけばいいか、作品の中でその場面はどうあるべきかなどについて考えるようになりました」

 そしてトップスター龍真咲の退団公演が始まり、龍真咲扮するカリスマ的な信長が生き生きと動き出すと、「龍さんの信長は無謀なことを言っているようだけれど成功するんじゃないかと思わせる魅力があります。私もそういうものを目指したいのですが、これまでに演じたことのない役柄なので難しいだろうなと感じています。私なりに芯の強い、夢を持って突き進んでいく信長を表現できればと考えています。髭は以前に顎髭をつけたことがありますが、口髭は初めてなので似合うかどうかが本当に心配です。新人公演に主演させていただくのは今回で3度目となり、求められるものも次第に大きくなっていると感じますが、龍真咲さんの退団公演の新人公演で主役を演じさせていただくという責務を忘れず、精一杯頑張っていきたいと思います」

 暁千星さんの本役は織田信長の家臣、佐脇良之だ。前田利家の弟である。「信長に付き従う最初の頃は希望に満ちあふれていますが、様々な出来事を通じ、信長に対して憎しみが生まれていくという人物ですので、心情の移り変わりをしっかりと表現したいです」
 
 タカラヅカに入る前はバレリーナを目指していたという暁千星さん。「ダンスが得意だと仰っていただくことがありますが、同期の中でもダンスの得意な人はたくさんいますし、むしろ私は考えず踊りすぎてしまうので、男役の踊りをしなさいと注意されます。男役の踊りは力を抜いて踊ることが大切で、スーツやエンビを着てどうカッコよく踊れるか、それが今の私の課題。上級生のダンスを見ながら稽古を続けます」

 近くで見る素顔の暁千星さんは、華やかなオーラに包まれて申し分のない美しさだ。自身を見つめるストレートな言葉に豊かな知性と品性が輝いている。

暁 千星さん

2012年『華やかなりし日々』で初舞台、月組に配属。14年『明日への指針―センチュリー号の航海日誌―』新人公演で初主演。15年バウホール公演『A-EN』で初バウ主演。
出身/広島県  愛称・ARI

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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