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月組 朝美 絢

7月18日まで上演中の月組宝塚大劇場公演は、戦国乱世の下天を華々しく駆け抜けた織田信長の生涯を描いたロック・ミュージカル『NOBUNAGA』と、愛をテーマに綴るシャイニング・ショー『Forever LOVE‼』の2作品。 華やかな舞台姿と大きな瞳でファンを魅了する朝美絢、月組トップスター龍真咲の退団公演を、艶やかに盛り上げる。

信長を誘惑する艶っぽい場面で あやしげな魅力が弾ける

 6月10日、宝塚歌劇団月組トップスター龍真咲の退団公演『NOBUNAGA〈信長〉―下天の夢―』『Forever LOVE‼』の幕が上がった。7月18日まで宝塚大劇場、8月5日から9月4日まで東京宝塚劇場で上演。

 ロック・ミュージカル『NOBUNAGA〈信長〉―下天の夢―』で初めての女役に挑戦しているのが第95期生の男役スター朝美絢さん。「ショーでは何度か女役で踊ったことがありますが、お芝居では全く初めてなので、お稽古場では女性として声を出すこと自体に緊張しました。それに、日本物の女性の所作に慣れていない為、立っているだけで筋肉痛になりました」
朝美絢さんが演じるのは、織田信長の正室・帰蝶の家臣、妻木。妻木は何者かに操られて信長を誘惑する。色っぽさ、艶っぽさに定評がある朝美絢さんの見せ場だが、朝美絢さんの魅力が弾ける場面はそれだけではない。もう一役、中性的な美男子として有名な信長の家臣・森蘭丸に扮して決死の立ち回りをする。「日本刀を持つのは初めてですが、蘭丸がどれほど信長に忠誠心を持って仕えていたかがわかるように演じたいと思います」

 新人公演卒業後、初めての宝塚大劇場公演である。「時間的にも気持ち的にもこれまでより少し余裕が生まれたのか、二役に集中できているように感じています」

 小さい頃からクラシック・バレエを習い、発表会が大好きだったという朝美絢さん。宝塚との出合いは小学生の時、テレビ中継番組を録画したものを祖母と母が見せてくれた。ナマの舞台を初観劇したのはTAKARAZUKA1000days劇場での『螺旋のオルフェ』『ノバ・ボサ・ノバ』。子どもながらにスーツ姿の男役の格好良さに感動したと言う。

 宝塚音楽学校受験を決意し、二度目の受験で晴れて合格。2009年4月に初舞台を踏んだ。以来、ずっと月組。下級生時代の新人公演『THE SCARLET PIMPERNEL』『ジプシー男爵』『アルジェの男』『エドワード8世―王冠を賭けた恋―』で珠城りょうの役を演じてきた。「珠城りょうさんには舞台人としての基礎的なことをすべて教えていただき、感謝しています」

 新人公演初主演は2014年9月『PUCK』だ。「私の中に妖精らしさがあるとは思えなかったのですが、お稽古が始まるとどんどん楽しくなり、本番はすごく楽しんで演じることができました。翌年、バウワークショップ公演『A–EN』に主演させていただいた時は、今までには考えられないくらい大きな挑戦だけれど、今がんばらなくてはと思いましたし、幕が上がるとこれまでやってきたことが実になっていると実感できる瞬間があって幸せでした」

 研7で迎えた最後の新人公演『舞音―MANON―』の主役シャルル・ド・デュランを演じたのも朝美絢さん。「軍服を着た、タカラヅカの王道の男役をさせていただき、多くを学ぶことができました。龍真咲さんから、芸事は誰かの方法を真似したらうまくなるというわけではなく、自分のやり方を見つけて上達していくものだから、朝美自身の声の通り方とか感じ方とかをたくさん見つけなさいね、と貴重なアドバイスをいただきました。これからは本公演だけに集中できる分、歌も踊りもお芝居も基礎をしっかり見つめ直して更に向上していきたいと思います」

 朝美絢さんがこれまで目指してきたのは一本筋の通った、芯の太い男役。その信念はこれからもぶれることがないという。その上で今作では「男役は勿論だけれども、女役もいいなと思っていただけるようなものをお見せできたらと思います」

 意欲を語る大きな瞳が深い色を湛えている。


朝美 絢さん

2009年『Amour それは…』で初舞台、月組に配属。14年『PUCK』新人公演で初主演。15年バウホール公演『A-EN』でバウ初主演。
出身/神奈川県  愛称・あーさ、J

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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