3月18日から4月25日まで上演の宝塚大劇場星組公演は、ワルツ王、ヨハン・シュトラウス二世の傑作オペレッタ「こうもり」より、19世紀後半のウィーンを舞台にした愉快なミュージカル『こうもり』と、第102期生が初舞台を踏み、北翔海莉率いる星組の魅力を余すところなく見せる華麗多彩なショー『THE ENTERTAINER!』の2作品。 抜擢に応え活躍の場をひろげる星組若手スター 瀬央ゆりあ、タカラヅカらしい色気ある男役を目指す。
世界中で愛されているヨハン・シュトラウス二世のオペレッタ『こうもり』を原作とするMUSICAL『こうもり』…こうもり博士の愉快な復讐劇…と、第102期生が初舞台を踏むショー・スペクタキュラー『THE ENTERTAINER!』が3月18日、星組により宝塚大劇場で初日を迎える。「『こうもり』は原曲どおり歌います。男役はかなり低い音まで出しているので、とても勉強になります」と話すのは、2009年に入団した第95期生の瀬央ゆりあさん。トップスター北翔海莉が演じる主人公ファルケ博士の助手の1人、アルゴンに扮してオペレッタの歌唱に挑んでいる。
「仮面舞踏会で調子にのりすぎて泥酔したファルケ博士は、親友のアイゼンシュタインによってこうもりの扮装のまま大通りに縛りつけられ朝を迎えます。こうもり博士の渾名をつけられて街中の笑いものになったファルケ博士は憤懣やるかたなく、アイゼンシュタインにいたずらを仕掛けて仕返しをするのですが、それがとても楽しくて、お客様に大いに笑っていただけるのではないでしょうか」
虚々実々の愉快な復讐劇を繰り広げるのが、昨年の『ガイズ&ドールズ』で観客を沸かせた実力派の個性豊かな星組スターたちであり、幕が上がる前から期待が高まっている。その『ガイズ&ドールズ』の新人公演で初主演を射止めたのが瀬央ゆりあさんだ。「私にとって最後の新人公演で主役をいただけるとは想像もしていなかったので驚きすぎて、意外と冷静に受け止めることができたようにも思います」。その後、すぐに宝塚バウホール公演『鈴蘭(ル・ミュゲ)―思い出の淵から見えるものは―』の稽古が始まり、続く大劇場公演『こうもり』まで、めまぐるしく時間が過ぎたという。その間に注目度が急速にアップしてきた瀬央ゆりあさんだが、兆しは2014年の活躍に顕著に表れている。1月『眠らない男・ナポレオン―愛と栄光の涯に―』の新人公演で紅ゆずる演じるマルモン役に抜擢されたあと、5月のバウ公演『かもめ』のメドヴェジェンコ役で幕開きの長台詞を与えられた。7月『The Lost Glory―美しき幻影―』の新人公演での活躍を経て、11月の武道館公演メンバーに選出された。「1曲すべてを歌うとか長い台詞を喋るとか、初めてのことばかりで、大きな役をいただいてうれしいと思う気持ちよりも、どうやったらいいのだろうという戸惑いの方が大きかったです。それでも経験することで物事の捉え方や考え方が自分の中でどんどん変わっていき、舞台に立つ責任を感じるようになりました。特に武道館公演は星組メンバー中、わずか14名の中に入れていただき、少しですがソロも歌わせていただいて度胸がついた気がします」
これらの貴重な経験がすべて、新人公演主演にしっかりとつながった。今回の『THE ENTERTAINER!』は北翔海莉が星組トップスターに就任して初めてのショーである。「ショーは大好きです。お客様に役の中から芸名の自分を垣間見ていただけるところにショーの魅力があると感じています」。瀬央ゆりあさんが一度はやってみたかったというシルクハットにケーンを持って踊る場面のほか、黒燕尾やラテンの衣装での場面、さらにフィナーレでアイドル的な見せ場もある。水兵役のセーラー服を着た瀬央ゆりあさんも観られるのだ。
「舞台の上では1人の人間としてのすべてが出てしまいますので、清く正しく美しくというモットーの通り、品格を大切にすることを常に肝に銘じています。心がけているのは自分に嘘をつかないこと、できない言い訳をしないこと。その上で今、私が目指しているのはタカラヅカらしい色気のある男役になることです」
新体操部で活動していた中学時代、瀬央ゆりあさんが最も得意だったのは持久走。自分のペースを守り、校庭をひたすら走り続けた。「今でも持久走には自信があります」
得意だという持久走と同じく、男役・瀬央ゆりあとしてひたむきに走り続ける姿は、多くの観客の心を魅了するに違いない。
2009年『Amour それは…』で初舞台、星組に配属。15年『ガイズ&ドールズ』で新人公演初主演。
出身/広島県 愛称・せおっち、なおみ