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月組 叶羽 時

宝塚歌劇101周年を締めくくる月組宝塚大劇場公演は、アベ・プレヴォ作「マノン・レスコー」のアジア版『舞音―MANON―』と、グランドカーニバル『GOLDEN JAZZ』の2作品を12月14日まで上演中。 得意のダンスで注目をあつめる、月組娘役の叶羽時、新人公演ではタイトルロールのヒロイン「マノン」に挑む!

「舞音」新人公演で ヒロインのマノンをピュアな心で演じる

 熱帯地方独特の湿ったけだるい空気がまとわりつくサイゴンで海軍将校シャルルが出会った踊り子マノンは、社交界で男たちの心を次々に捉える黒髪の美少女だった―。

 2015年の掉尾を飾る宝塚大劇場公演は、月組にとって久しぶりのオリジナル・ミュージカル『舞音―MANON―』~アベ・プレヴォ「マノン・レスコー」より~と、新作ショー『GOLDEN JAZZ』の2本立て。バレエやオペラ作品としてもよく知られている「マノン・レスコー」を、座付演出家・植田景子氏は20世紀初頭のフランス領インドシナに舞台を置き換えた。東洋のエキゾティシズム溢れるラブストーリーを、充実期を迎えた月組トップスター龍真咲とトップ娘役の愛希れいかが情感豊かに演じている。

 新人公演でヒロインのマノン役を演じるのが研6の叶羽時さん。満を持しての初ヒロイン役だ。「マノンは魔性の女ではなく、ピュアな少女らしさがあるために男たちが惹かれていきます。私にとって大きな挑戦ですが、これまで学んできたことを活かし、楽しみながら挑みたいと思います」

 清々しさが感じられる笑顔でそう語る叶羽時さんは、2010年に初舞台を踏んだ第96期生。同期には雪組や花組のトップ娘役もいる。「私は小さい頃から自分のペースで一歩一歩進んでいくタイプで、言葉を覚えるのも歩き始めるのも自転車に乗るのも遅かったようです。けれども自分ができるようになりたいと思ったことはいつでも最後までやり通してきました。今は特にお芝居が大好きなのでマノン役をさせていただけるのは本当に幸せです」

 母親の影響で3歳からタップダンスを習い、発表会の舞台に立つことが何より大好きだったという叶羽時さん。「母の話では舞台に立つとまさに狂喜乱舞という感じで、人が変わったように夢中で踊る子どもだったそうです」

 宝塚歌劇の娘役を目指し、難関を突破して宝塚音楽学校に入学。早くからダンスの得意な娘役として注目されてきた叶羽時さんは2011年1月、宝塚バウホール公演『Dancing Heroes!』に最下級生として出演が叶う。そして宝塚歌劇100周年の2014年、着実に実績を残してきた叶羽時さんは次のステップにつながる経験を重ねていく。3月、三部作の一つ『TAKARAZUKA花詩集100!!』の新人公演で、トップ娘役の愛希れいかが踊る“蘭の女王”役に抜擢され、その折に愛希れいかから受けた助言「チャンスは掴むもの」という言葉を胸に刻み込んだ。7月、シアター・ドラマシティ公演『THE KINGDOM』では、ダブル主演の1人、美弥るりかが扮するヘアフォール伯爵の初恋の人キャサリン役を演じた。「正塚晴彦先生に何度も怒られ、泣きながらお稽古しました。私の芝居を根本から叩きなおしていただいたおかげで、お芝居の本当の楽しさに気づくことができ、お芝居が大好きになった忘れられない舞台です」

 さらに2015年1月、宝塚バウホール公演『Bandito(バンディート)―義賊サルヴァトーレ・ジュリアーノ―』では主演の珠城りょう演じるサルヴァトーレの昔の恋人マウリッチャ・ボーノ役を、4月『1789―バスティーユの恋人たち―』の新人公演で主役ロナンの恋人オランプ役を演じた。「主演のかたの恋人役をさせていただき、娘役として改めて様々なことを勉強することができました。役づくりのために台本に書かれていない部分を想像して肉付けしていく、その作業が大好きで興味が尽きません」

 本公演での役は、「水の精霊」というシャルルとマノンの運命のダンサー。「マノンの影の役もさせていただきますので、水の精霊として踊るときの感情とつなげられるように、自分が出ていない場面の芝居もできるだけ見ておくように心がけています」

 ショーではプロローグのあとにトライアングルを持って踊るのが楽しい、と叶羽時さん。

 娘役・叶羽時さんという、かけがえのない蕾が咲き始める瞬間に立ち会える幸運が、観客の胸を震わせることだろう。

叶羽 時さん

2010年『THE SCARLET PIMPERNEL』で初舞台、月組に配属。16年『舞音―MANON―』新人公演で初ヒロイン
出身/兵庫県  愛称・ときこ

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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