11月9日まで上演中の花組宝塚大劇場公演は、田辺聖子氏の「新源氏物語」をもとに、1981年に榛名由梨主演で初演、1989年には剣幸主演で再演され大好評を博した、きらびやかな王朝文学の世界を描く『新源氏物語』と、レビュー『Melodia―熱く美しき旋律―』の2作品。 早くから注目され抜擢が続く城妃美伶、組替えを経て多彩な役を演じ、花組の舞台を艶やかに彩る。
宝塚大劇場では11月9日まで、花組による『新源氏物語』―田辺聖子作「新源氏物語」より―と『Melodia―熱く美しき旋律―』の2作品を上演中。『新源氏物語』は1981年に初演し、89年に再演されて大好評を博した作品だ。深まり行く秋の中で久々に、きらびやかな王朝文学の世界がドラマティックに繰り広げられている。光源氏と葵の上の息子である夕霧の正室・雲井の雁に扮しているのは、2011年に初舞台を踏んだ第97期生の城妃美伶さん。「日本物のショーに一度だけ出演させていただいたことがありますが、日本物のお芝居は初めてなのでお稽古場では苦戦しました。けれども、その分たくさんのことを勉強させていただきました」
光源氏をはじめ男女の切ない思いに満ちた『新源氏物語』。夕霧役の鳳月杏とのラブシーンは「お客様に少しだけほっこりしていただける場面になっているのではないでしょうか」
現在、研5の城妃美伶さんは初舞台後、1年間の組回りを経て星組に配属され、「最下級生の頃からいろんな場面に出演させていただき、挑戦の日々でした」と振り返る。注目度バツグンで抜擢続きの城妃美伶さんが初めて演じた新人公演のヒロイン役が、多くの楽曲を歌うジュリエット役。4歳からクラシックバレエを習いバレリーナを目指したこともある城妃美伶さんだが、「入団した頃は歌うことに苦手意識があり、そんな自分がくやしくてひたすらレッスンに打ち込みました。ジュリエットを演じられる喜びが1番の原動力になって、朝から晩まで無我夢中でお稽古していましたね」。新人公演『ロミオとジュリエット』が高い評価を得た翌年、宝塚バウホール公演『かもめ』のヒロイン、ニーナ役が巡ってきた。「チェーホフの戯曲を舞台化した、ストレートプレイに近いようなお芝居で、個人的にはスタニスラフスキー・システムという演劇メソッドも勉強しましたが、何より尊敬する上級生の方々とご一緒させていただける毎日が夢のように楽しく、寝食を忘れてお稽古に取組みました。『かもめ』の舞台を通してお芝居が大好きになり、舞台上で役の人物として生きるという、お客様の前でしか学べないことを経験することができました。そんな星組時代に学んだことが花組移籍直後の東京国際フォーラム公演『Ernest in Love』のセシリイ役を演じる上でも役立ったと思います」
2015年3月、宝塚大劇場公演『カリスタの海に抱かれて』のシモーヌ役が、城妃美伶さんにとって本公演初の通し役となる。「最初から最後までその役だけを演じるのは初めての経験でした。新人公演ではヒロインのアリシア役にも挑戦させていただきましたが、主演された水美舞斗さん、そして同期をはじめ沢山の方々に支えてもらって、何とか演じ切ることができました」
念願だった海外公演出演の夢も叶った。8月には、第2回台湾公演『ベルサイユのばら―フェルゼンとマリー・アントワネット編―』~池田理代子原作「ベルサイユのばら」より~と『宝塚幻想曲』に出演したのだ。「いつか海外公演に出演させていただけたらと願っていました。台湾では現地スタッフの方々と言葉の壁をのり越えて共に舞台を創り上げていく貴重な経験をさせていただきましたし、お客様がとても温かく、千秋楽の時には国を超えた絆を感じることができとても楽しかったです」
『新源氏物語』と同時上演中の『Melodia―熱く美しき旋律―』の見所をお聞きすると「今回のショーは、大勢で出演する場面がたくさんあります。特に中詰では、群舞による熱いパワーをお届けしたいです。私はフィナーレのロケット前に、水美舞斗さんを中心に朝月希和さんと3人でフレッシュなナンバーを歌い踊りますので、お楽しみいただければ幸せです」
花組に受け継がれている宝塚らしさの伝統を感じ取り、演じることへの尽きない好奇心を燃え立たせている城妃美伶さん。温かみのある知性と類稀な感性が、観客の視線を引きつけて離さない。
2011年『めぐり会いは再び』で初舞台、星組に配属。13年『ロミオとジュリエット』新人公演で初ヒロイン。14年バウホール公演『かもめ』で初バウヒロイン。10月花組へ組替え。
出身/東京都 愛称・みれい、しろきみ