宝塚歌劇101周年、2015年の幕開けを飾る雪組宝塚大劇場公演は、モンキー・パンチ氏の原作をミュージカル化した『ルパン三世―王妃の首飾りを追え!―』と、新生雪組が挑むいい男たちのレビュー『ファンシー・ガイ!』の2本立て。 早霧せいな・咲妃みゆ新トップコンビお披露目公演で、娘役として進化した大湖せしるが、クールでカッコいい峰不二子役に挑む。
2015年1月1日、宝塚大劇場雪組公演『ルパン三世―王妃の首飾りを追え!―』『ファンシー・ガイ!』の初日の幕が上がる。宝塚歌劇101周年のスタートだ。新生雪組を率いるのは新トップスター早霧せいな。新トップ娘役は2010年に初舞台を踏んだ咲妃みゆである。
『ルパン三世』はモンキー・パンチ氏の原作を座付作者・小柳奈穂子氏が脚本・演出を担当し、世界に先駆けてミュージカル化したお洒落な作品。どなたがどの役を演じるのか、とても気になっていたが、セクシーな魅力でルパンを翻弄する峰不二子役は人選をまちがうと作品自体が生気を失ってしまうのだ。
しかし、そんな危惧はすぐに霧散した。雪組には大湖せしるさんがいる。大湖せしるさんは元・男役スターで新人公演『エリザベート』ではルイジ・ルキーニを演じ、同じく『マリポーサの花』では主役も経験ずみ。入団11年目に娘役に転向後は2013年8月の宝塚バウホール公演『春雷~ゲーテ作「若きウェルテルの悩み」より~』で、ヒロインのロッテを演じた。「バウでヒロインをさせていただけるとは全く予想もしていませんでしたので、驚きのあまり椅子から滑り落ちてしまって、その後のことは殆ど覚えていないんです」
ご本人にとっては想定外の抜擢だったようだが、そんな娘役転向を考えるキッカケになったのが2011年1月『ロミオとジュリエット』で演じた“愛”だ。台詞がなくダンスだけで表現する“愛”の役は、ショーで1場面だけ女役に扮して踊るケースとは異なり、最後のフィナーレナンバーにも女役で出演する通し役なのである。
「お稽古場で小池修一郎先生に『もっと内面から表現しなさい』と言われ、化粧を全部落とし、無表情で、いかに体だけで表現できるかということだけを考えて踊ったところ、体の中から沸々と湧き上がってくるものがあって、これは何だろうと。“愛”として存在している間、私はとても幸せでした。男役としてはやりたいことをやったのではないかなと、1年間ほど自分自身に問いただし続けた結果、これからは新しい自分を見つける旅をしようと決心し娘役に転向しました」
『ロミオとジュリエット』で“愛”を演じなければ、あるいは今の大湖せしるはいないかもしれない。そんな貴重な経験ができた『ロミオとジュリエット』以来の、お正月公演が始まる。
「『ルパン三世』は小さい頃、アニメで見ていたので、そのときのイメージを大切にしたいと思います。その上で、峰不二子役が決まってからDVDで見たさまざまな不二子像を自分の引き出しに加え、最終的に大湖せしるの峰不二子ができたらいいなと。不二子は少女みたいに悪戯好きで小悪魔的。クールでカッコよく、どんな人物に変装しても人間としての品がある。だからみんなが憧れ続けるのだと思います」
まもなく娘役3年目に入る。「転向したときから心がけているのは、11年間学んできた男役の芸を封印するのではなく、芸にプラスしていきたいということ。お芝居に限らずショーでも、男役の要素が役に立つことは多いです。目の使い方や、意識のもっていき方など、今は男役の要素をどれだけ出せばいいかなという調整を自然とやっている自分がいて、毎公演、すごく楽しんでいます」
12月20日〜22日に開催される『タカラヅカスペシャル2014― Thank you for 100 years ―』に出演する。出演者は、各組からトップスターをはじめ主要メンバー10数名のみという絢爛豪華なイベントだ。「女役の出演者の中では最上級生です」
大湖せしるさんは、凛とした眩い光に包まれながら、そう言った。大湖せしるというスターにしかできない光り方を、しっかりと見ておきたいと思う。
2002年『プラハの春』で初舞台、雪組に配属。08年『マリポーサの花』で新人公演初主演。12年娘役に転向。13年バウホール公演『春雷』で初ヒロイン。
出身/兵庫県 愛称・せし、せしこ