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月組 珠城りょう

11月3日まで上演中の月組宝塚大劇場公演は、再演の呼び声の高かった名作、シェイクスピアの「真夏の夜の夢」をモチーフにしたファンタジックなミュージカル『PUCK』と、ダンスを中心にしたエネルギッシュなショー『CRYSTAL TAKARAZUKA―イメージの結晶―』の2本立て。 華やかさに加え、確かな実力を持つ月組若手スター珠城りょう、数々の抜擢に応え、多彩な男役の魅力をみせる。

名作『PUCK』の再演で  キーパーソンのボビーに挑む『PUCK』   

 1992年に月組で初演後、再演が待ち望まれていた『PUCK』が、100周年の年に甦った。9月26日から11月3日まで宝塚大劇場で上演中だ。『PUCK』は、宝塚歌劇団座付演出家の小池修一郎氏がシェイクスピアの「真夏の夜の夢」に登場する妖精パックを主人公に描いた、コミカルでファンタジックな宝塚歌劇の名作である。幕開けに、松任谷由実氏の作曲による主題歌「ミッドサマー・イヴ」が流れてくる。すると忽ち、観客たちはイギリス南部のコーンウォール地方、グレイヴィル家の森の中へと誘われていく。

・・・夏の日が暮れて、白い月が浮かぶ頃、この森の奥深く、フェアリーたちが生まれる・・・
 森番の息子、ボビーを演じているのが研7の珠城りょうさん。ロックシンガーを目指しているボビーは、バンド「ウッドペッカーズ」のリーダーだ。

 「ボビーは溌剌としていてエネルギッシュ。仲間意識が強い青年なので、ウッドペッカーズとの関わりを大事に演じたいと思います。妖精パックがボビーに出会わなかったら恐らくグレイヴィル家で働くことはなかったので、人間界に落ちてきたパックを自分たちの世界に巻き込んでいくところはお芝居のキーポイント。でもボビー自身はそのことに少しも気づいていません。そんなボビーのまっすぐな勢いや無邪気な強引さ、天真爛漫なところを演じることで、男役としての幅がもっと広がればと願っています」

 初演でボビーを演じたのは研5ですでに2番手だった天海祐希だ。大先輩の役に抜擢されたプレッシャーはあるが、挑戦のし甲斐も充分感じている。「『PUCK』はたくさんのお客様に愛されている作品です。初演のベースは壊さずに、私なりの新たなボビーが演じられたらと思います」

 公演中の10月21日、珠城りょうさんにとって最後の新人公演の幕が上がる。新人公演主演を4回経験している珠城りょうさんが今回演じるのは、グレイヴィル家の当主、サー・エドワード・グレイヴィル役。「男役として勉強になることにはどんどん挑んでいきたいです。新人公演があることで本役さんの稽古を見ることができますし、先生のご指導も得られます。新人公演を卒業すると本公演だけになりますが、今度は自分が下級生の手本になる立場ですから、与えていただいた機会を無駄にしないよう、気を引締めて、責任を果たしていきたいと思います」

 同時上演のショーは『CRYSTAL TAKARAZUKA―イメージの結晶―』。男役だけが少人数で踊るラテンジャズ風の場面で芯を務める。「さわやかに熱く、ラテンっぽい雰囲気で踊っています。男役の魅力を存分に楽しんでいただける場面なので、お客様にしっかりアピールしたいですね」

 2015年1月、珠城りょうさんは宝塚バウホール公演『Bandito―義賊サルヴァトーレ・ジュリアーノ―』に主演する。2013年5月にバウ初主演した『月雲の皇子―衣通姫伝説より―』は優雅な日本物で、心根のやさしい青年役だった。今回は生き延びていくためには何でもする義賊の役だ。「義賊というより本当の悪党だったのではと言われていますが、私は黒い役をやってみたかったので、年末年始は休まずお稽古に専念します。主演は台詞も歌も格段に量が増えますので、レッスンするだけではなく、ケアもちゃんとして、まず自分自身が気持ちよく歌えるようになることが目標です」

 珠城りょうさんは長距離走が得意だ。「中高では1000メートル走に出場しました。持久力には自信があります」

 数々の抜擢に応えてきた男役の活躍に目を凝らすと、珠城りょうさんの瞬発力のすごさにも驚かされる。

珠城りょうさん

2008年『ME AND MY GIRL』で初舞台、月組に配属。10年『THE SCARLET PIMPERNEL』で新人公演初主演。13年バウホール公演『月雲の皇子』でバウ初主演。
出身/愛知県  愛称・りょう、たまき

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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