新トップスター明日海りおの大劇場お披露目となる花組宝塚大劇場公演は、今や宝塚歌劇を代表する人気ミュージカルとなった『エリザベート』を、8月22日から9月22日まで上演。 踊ることが大好きという若手スター水美舞斗、憧れの『エリザベート』の舞台で初女役のマデレーネと新人公演のルキーニに挑戦し、多彩な表情を魅せる。
宝塚歌劇100周年の今年は話題の公演が目白押しだ。8月22日には新生花組披露公演『エリザベート−愛と死の輪舞-』が宝塚大劇場で初日を迎える。同作品は1996年の宝塚初演以来、上演回数799回、観客動員数約192万人を記録する人気ミュージカル。前回の月組公演から5年ぶり、花組での上演は2002年以来だ。「『エリザベート』に出演できるとお聞きしたときは、本当にうれしくて」と第95期生の水美舞斗さん。ファン時代に観劇し、いつか私も絶対に出たい、と夢をふくらませてきたという。研6になった今、その夢が叶った。
水美舞斗さんにとって初めての女役マデレーネ。皇太后ゾフィーの策略どおり、オーストリア・ハプスブルク家の皇帝フランツ・ヨーゼフを誘惑する黒天使の役である。マデレーネの魅惑的なダンスに魅了されたフランツは、ついに皇后エリザベートを裏切る。
「マデレーネは可愛いらしい娘役さんが演じる印象があり、男役の私がさせていただけるとは想像もしていませんでした。プレッシャーもありますが、男役ならではのマデレーネ像を演じたいと思います」と意欲を語る水美舞斗さん。だが水美さんの挑戦はこれだけではない。9月9日の新人公演ではエリザベートを暗殺する、ルイジ・ルキーニ役を演じるのだ。
「ストーリーを引っ張っていく狂言回しのルキーニ役は、演じたいと憧れていた役です。ルキーニ次第で物語の見え方が変わってくるほど強い存在感があり、興味深いです。本役の望海風斗さんは『エリザベート』を最後に雪組に組替えされますので、望海さんの男役の芸をしっかり受け継いで自分のものにしていければ。教えていただける機会を得られたことを感謝しています」
2014年6月、宝塚バウホール公演『ノクターン』で軍服を着たベロヴゾーロフを演じる水美舞斗さんの美しかったこと。「主人公の恋敵として見せ場をいただいたので、10日間の上演期間中にいかに前進していけるかということに集中しました」
3歳からクラシックバレエを始めた水美舞斗さんは、小学5年生になると宝塚コドモアテネに通い、宝塚音楽学校受験に向けてレッスンに励む日々をすごした。コドモアテネ最後の舞台ではセンターで踊ったほどの力量の持ち主だ。宝塚歌劇が大好きな祖母に連れられて観た大劇場公演やバウホール公演の数々―。いつかこの舞台で踊るんだと、ワクワクしながら観劇したたくさんの思い出が、今の男役・水美舞斗さんを輝かせる原動力である。
「踊ることが幸せだった私に、お芝居を演じる楽しさを教えてくれたのが研3でウカを演じた『カナリア』です。それまでは本公演であれ程多くの台詞をいただいたことがなく、相手とどうやって台詞のキャッチボールをすればいいのか、まったくわかりませんでした。こんなことで本当に舞台に立てるんだろうかと悩みましたが、壁にぶつかり、それをなんとかのり越えた経験を経てお芝居に対する苦手意識が克服できました」
2013年『オーシャンズ11』は舞台人としての意識を高めてくれた。イレブンの一人、バージル・モロイを演じた水美さんは、弟役のターク・モロイに扮した同期の柚香光と二人だけの場面を与えられ、全身が責任感で貫かれるような感覚を味わった。次のバウホール公演『フォーエバー・ガーシュイン』で演じたのがウォルター・ウィンチェルという狂言回し役だ。「ウォルターが喋らなければ登場人物が舞台に出てこられないので身がひきしまりました。あの経験をルキーニに生かしたい」
『エリザベート』の幕開けから妖しく舞う黒天使の水美舞斗さん。初女役のマデレーネと新人公演のルキーニ。さまざまな表情を見せる水美舞斗さんの、今後の活躍がますます楽しみである。
2009年『Amourそれは…』で初舞台、花組に配属。11年シアター・ドラマシティ公演『カナリア』でウカを好演。13年『オーシャンズ11』新人公演ではラスティー・ライアンを、14年『ラスト・タイクーン』新人公演ではパット・ブレーディーを演じる。
出身/大阪府 愛称・みなみ、マイティー