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雪組 月城かなと

7月14日まで上演の宝塚大劇場雪組公演は、前田利家の甥にあたる前田慶次の豪放磊落な生き様を描いた『一夢庵風流記 前田慶次』と、グランド・レビュー『My Dream TAKARAZUKA』の2本立て。 宝塚歌劇の日本物が大好きという若手スター月城かなと、雪組トップスター壮一帆のサヨナラ公演で、伝統的な日本物の美しさをしっかりと受け継ぎ、新人公演主演に挑む。

宝塚歌劇の日本物を次代に伝える   美しき若手スター

 宝塚歌劇100周年で賑わう宝塚大劇場では、雪組による宝塚傾奇絵巻『一夢庵風流記 前田慶次』とグランド・レビュー『My Dream TAKARAZUKA』を7月14日まで上演中。

 今年の大劇場公演で唯一の日本物の芝居である『一夢庵風流記 前田慶次』は、隆慶一郎の人気小説が原作。豊臣秀吉の隆盛期に天下の傾奇者として名を馳せた前田慶次の豪放磊落な生き様を描く話題作だ。6月24日には、宝塚歌劇の日本物が大好きという第95期生の月城かなとさんが新人公演で主人公の前田慶次役に挑戦する。

 「昨年末、『Shall we ダンス?』で初めて新人公演に主演させていただいた時に、もう一度機会をいただけるなら又壮一帆さんの役を演じさせていただきたいと思いました。ですから今回、壮さんの退団公演で勉強させていただけるのが、とてもうれしいです」
 
 2009年4月に岡田敬二氏のロマンチック・レビュー『Amour それは…』で初舞台を踏んだ後、雪組に配属になった月城かなとさんは、2012年に花組から雪組に異動してトップになった壮一帆の後姿をお披露目公演からずっと見続けてきた。「今年3月にはシアター・ドラマシティと日本青年館で壮さん主演の『心中・恋の大和路』に出演して日本物の美しさを学ぶことができ、私も壮さんのように宝塚歌劇の日本物の伝統を受け継いでいきたいと改めて思いました。実は宝塚に入って1番出たかった作品が『心中・恋の大和路』なんです。与平をやりたい、あの歌が歌いたいと思い続けていました。思いがけずそれが実現し、稽古中も公演中も楽しくて、あれほど役にのめりこんだ舞台はありません。毎回1曲歌い終わって舞台袖にはけたら、体力を使い切った感じがしました。日本物は表情も動きも大きくない分、心を動かさなければ思いを伝えることができません。また知識がなければ演じられない奥深さもあり、立ち回りは作法に則って動くから流れるように美しいのです。今回は新人公演初主演と与平役を経験したあとですから、これまで以上に自分に厳しく取り組まなければいけないと肝に銘じています。壮さんには『元気よくやりなさい』とおっしゃっていただいたので、新しい月城かなとをお客様に見ていただける良い機会になるよう、その言葉を胸にがんばります」
素顔の月城かなとさんは、おっとりした口調で並々ならぬ意欲を語る。

 本公演では庄司甚内という謎めいた人物を演じる。「甚内は傀儡子の長の息子で、小刀を投げたり扇子を使った立ち回りをします。どこか存在感を出せればいいなと思います」

 さて月城かなとさんと宝塚歌劇との出会いは高校1年に遡る。同級生が貸してくれたビデオが朝海ひかる主演の『Romance de Paris』。「踊りませんか」と手をのばした朝海のフェアリー的な雰囲気に心臓が高鳴り、「ここに入りたい」と思いつめる。その後、東京宝塚劇場でナマの舞台を初観劇し、のめりこんだ。当時、通っていたのは進学校で勉強が厳しかったが、小さい頃から自分がこうと決めたことは行動するタイプだ。「一回は応援するけど、だめだったら諦めなさい」という両親からの条件つきで宝塚音楽学校を受験。クラブ活動のミュージカル部で『エリザベート』のトートを演じたことがあるそうだが、宝塚受験のためのレッスンは僅か3ヵ月間のみ。そしてタカラジェンヌへの道が拓かれた。「意外と大胆で心は熱いんです。これまで日本物をたくさん経験できたのは貴重なこと。今後、私が下級生に教えてあげられるものは何かと考えると、やはり壮一帆さんの1番近くで学んできた日本物だと感じます。まずは新人公演をしっかり務めて芸を磨き、いつか宝塚の伝統的な日本物の美しさを受け継ぎ伝えていける存在になりたいと思います」

 100年の伝統の上に花ひらく日本物の栄華。月城かなとさんは、その立役者である。

月城かなとさん

2009年『Amourそれは…』で初舞台、雪組に配属。13年『Shall we ダンス?』新人公演で新公初主演。
出身/神奈川県 愛称・れいこ

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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