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宙組 愛月ひかる

6月2日まで上演中の宝塚大劇場宙組公演は、1974年に初演され、社会現象を巻き起こした舞台『ベルサイユのばら』。99周年には「オスカルとアンドレ編」「フェルゼン編」を、100周年を迎える今回は宙組による「オスカル編」を上演。 衛兵隊アルマン役を演じ軍服姿が舞台に映える愛月ひかる、新人公演を卒業し、秋にはバウホールの初主演公演を控え、飛躍の年に挑む。

品格と謙虚さを備えた   伝統的な男役を目標に

 5月2日、宙組宝塚大劇場公演『ベルサイユのばら―オスカル編―』が初日を迎えた。6月2日の千秋楽まで僅か1ヶ月間の公演である。

 池田理代子の劇画から抜け出たように美しいオスカル役の宙組トップスター凰稀かなめを中心に、パワフルな宙組が一丸となって取り組む名場面の数々。植田紳爾氏の脚本・演出による世紀の名作『ベルサイユのばら―オスカル編―』に衛兵隊アルマン役で出演しているのが、2007年に初舞台を踏んだ第93期生の愛月ひかるさん。千葉県出身、173センチの長身が映える生粋の宙組スターである。

 「2009年の中日劇場公演『外伝ベルサイユのばら―アンドレ編―』に最下級生として出演させていただいてから、年月を経て衛兵隊の長の学年で再び『ベルサイユのばら』に出られることになり、とても感慨深いです。下級生の頃に上級生を見て学んだように、今度は私自身が行動で示していければという意気込みを持って、しっかり舞台をつとめたいと思います」

 入団して8年目になる愛月ひかるさんは、新人公演の主演を4回、経験している。2010年『誰がために鐘は鳴る』のロバート・ジョーダン、2011年『美しき生涯』の石田三成、2012年『華やかなりし日々』のロナウド・フィリップス、2013年『モンテ・クリスト伯』のエドモン・ダンテス。どの役も大人の男性の懐の深さと陰をもち、役づくりは一筋縄ではいかないむずかしさがある。「研3くらいまでは役がつかなくて、ずっと悩んでいました。その時の悔しさが私のバネになっているように思います」

 自分を信じ、自信をかき立てるようにしてプレッシャーに打ち勝ってきた初めての新人公演主演の日。2作、3作と経験を重ねるうちに却って恐さを知ることになり、役づくりに悩むことも多くなった。「恐さを克服するために、これまでの自分の経験を信じて引き出しの使い方に意識を集中しました。日本物が大好きなので『美しき生涯』で石田三成役をさせていただいた時はすごくうれしかったですし、演じる楽しさを感じることができました」

 愛月ひかるさんは昨年、新人公演を卒業した。最後の役は『風と共に去りぬ』のベル・ワットリング。女役である。「最後の新人公演で女役を演じることになるとは全く想像もしていなかったので、香盤を見た時はびっくりしました。ショーで女役をさせていただくことは今後もあるかもしれませんが、お芝居の通し役で男役が女役を演じるというのはそう経験できることではないので、ありがたいなと思いましたし、組替えで宙組に来られた本役の緒月遠麻さんにも色々教えていただくことができたので、結果としていいタイミングで自分が成長できる役をいただいたと感じています」

 その直後の2014年2月、シアター・ドラマシティ公演『翼ある人々―ブラームスとクララ・シューマンー』に出演してフランツ・リスト役を演じた。「それまでの私はナルシストで自分に陶酔する役に対して苦手意識があったのですが、観に来てくださった上級生の方々や同期から、意外と合っているねと言われ、作・演出の上田久美子先生に新境地を引き出していただいたことに感謝しています」

 100周年への思いをお聞きすると、「宝塚が大好きな私にとって宝塚歌劇100周年の年に在団していることが夢のようです。母の膝の上で観劇を始めた頃からずっと観てきましたが、品格と謙虚さを備えた宝塚の伝統的な男役を昭和からのファンのかたにも観続けていただきたいですし、新しいファンも増えてほしい。それらが叶うような男役になることが私の目標です」

 これからの活躍に期待がかかる愛月ひかるさんにとって、今年は飛躍の年だ。9月、宝塚バウホールの初主演公演『SANCTUARY』が控えている。

愛月ひかるさん

2007年『シークレット・ハンター』で初舞台、宙組に配属。10年『誰がために鐘は鳴る』新人公演で新公初主演。
出身/千葉県 愛称・あい

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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