1月1日~2月3日まで、宝塚大劇場で開催されている星組公演「眠らない男・ナポレオン―愛と栄光の涯に―」。フランスが生んだヒーロー、ナポレオンに扮する柚希礼音さんの取材会が昨年12月に実施された。
宝塚歌劇の初公演は1914年。その時から数えて2014年は100周年。世紀のカウントダウンが始まった2013年12月上旬、100周年記念公演第1作『眠らない男・ナポレオン―愛と栄光の涯に―』に主演する星組トップスター柚希礼音さんは黒いシャツ、ジャージレギンスにブーツというスタイルで会場に姿を見せ100周年の幕開けにナポレオンを演じる心境を語り始めた。
「宝塚歌劇100周年の記念公演第1本目を担当させていただくことに、大きな責任を感じています。ここから又新たなスタートになるように、宝塚の舞台に立てる喜びや宝塚が大好きな気持ちを大事にして、いろいろなものに挑戦しながらやっていきたいと思います」
『眠らない男・ナポレオン』は、『エリザベート』や『ロミオとジュリエット』など多くの海外ミュージカルの宝塚版に挑んできた宝塚歌劇団が、次に「宝塚から世界へ発信するオリジナル作品」を目指し、作曲を『ロミオとジュリエット』のジェラール・プレスギュルヴィック氏、作・演出を座付作家の小池修一郎氏が担当して創作した、話題の日仏コラボレーション超大作である。
歌う曲の数が半端ではない。ナポレオン・ボナパルト役の柚希礼音さんは「歌と歌の間にお芝居を入れ込んでいる感じで、1幕だけでも30曲ほどあります」と、サラリと言う。
冒頭は、パリの陸軍士官学校時代。柚希さんは15歳のナポレオンで登場する。
「ナポレオンは子どもの頃から知的で無口、自尊心が強かったようです。本当のナポレオン像はどうだったのか、資料を見ても何通りもの解釈があってわかりにくく、難しいなと思いながら稽古を始めましたが、フランス革命後の混乱した状況が許せず、本当の“自由・平等・博愛”の世界をつくりたかったのではないかと思うようになりました」
ナポレオンの指揮で少数の下級生が上級生に快勝した士官学校での有名な雪合戦のエピソードはもちろん、トップ娘役の夢咲ねねが演じるジョセフィーヌとの出会い、結婚、そして別れまでが1幕で描かれる展開の早さだ。
「1幕のかなり前半にジョセフィーヌとの“ラブラブ”なシーンがあり(笑)、その後はどんどん関係が悪くなっていきます。これまでにない夢咲との雰囲気がすごく新鮮です」
最後はヒミツ。そのジョセフィーヌと別れたことで勝利の女神がいなくなり、ナポレオンの苦戦が始まるという筋立てだが、「いわゆる出来事の多さより役の心情を丁寧にお伝えすることがベースであり、私自身のテーマです」と、きっぱり宣言した。
好きな場面は、第1幕の“いつか荒鷲のように”と歌うシーン。
「やがて大きな鷲になる子鷲をイメージして歌っていますが、とても壮大で、アルプスの山々が見えるような感じがします」
大阪の四天王寺学園出身。1999年に入団した第85期生である。新人時代にベルリン公演と中国公演に参加し、2009年に星組トップスターに就任後、2013年には台湾公演を率いた。特に卓越したダンス力に定評があり、今作でも戦闘シーンの迫力は圧巻だ。
「100周年のスタートは、また200周年300周年に向かっての挑戦です」と語る柚希礼音さん。
その幕が上がり、宝塚から世界へ発信するオリジナル・ミュージカル『眠らない男・ナポレオン』に海外から熱い視線が集まる。宝塚歌劇101周年の始まりである。
1999年『ノバ・ボサ・ノバ』で初舞台、同年星組に配属。期待の大型新人として早くから注目を集める。2003年『王家に捧ぐ歌』で新人公演初主演。07年『Hallelujah GO!GO!』でバウホール公演単独初主演。08年『THE SCARLET PIMPERNEL』で悪役ショーヴランを演じ好評を得る。09年『大王四神記Ver.Ⅱ』より星組トップスターに就任。10年梅田芸術劇場公演、博多座公演『ロミオとジュリエット』では純情な青年ロミオを演じ観客を魅了。11年『オーシャンズ11』で第37回菊田一夫演劇賞を受賞。13年台湾公演『怪盗楚留香外伝−花盗人−』では現地の人々からも絶賛を浴びる。
出身/大阪府 愛称・ちえ