近年、境内の史料館前水盤の樹上に卵を産み付け、水盤で育ったオタマジャクシが7月中旬に山へ帰るモリアオガエル。今年もその様子が見られ、史料館を訪れた参拝者に涼やかなひと時を提供しています。史料館では7月1日から「豊藏の画」展が始まり、人間国宝、荒川豊藏が絵付けした珍しい赤絵や染付の作品を観ることができます。
平成20年11月に開館した史料館の開館記念と開館二周年記念に開催された「荒川豊藏」展。これまで27回に及ぶ展示でも荒川豊藏の貴重な作品が展示されてきました。
豊藏は美濃焼の復興を成し遂げ、「志野」「瀬戸黒」の人間国宝として知られていますが、美濃の大萱窯で焼かれた「志野」「瀬戸黒」「黄瀬戸」のほか、染付や色絵、粉引、鉄絵など多種多様な焼きものを作陶するため、昭和21年に多治見の虎渓山に水月窯を築きました。
陶芸の道に入る以前には画家を志して上京したこともあるほど、絵にも長け、常にスケッチ帳を携え、風景や花鳥の写生、古陶磁の模写や自作の茶碗など、身の回りのものは何でも描いたようです。そして、水月窯では絵に対する思いが溢れた作品が多く生み出されました。それら染付や赤絵の花入れや鉢、茶碗などの中から藍が美しい「染付高砂手花入」、内側に獅子が描かれている「赤絵玉取獅子図鉢」などが展示され、また、山の風景が絵付けされた味わいある志野の茶碗など、豊藏の自在で楽しく、のびやかな筆運びを観ることができます。
第28回展のテーマ「豊藏の画」は「志野」や「瀬戸黒」に匹敵する豊藏の偉大な芸術の一端を見せてくれています。