発行日 2011年9月
著 者 江見翠
印刷・製本 あさひ高速印刷株式会社
並製本 102頁 四六判
和紙風の白い表紙にタイトル文字の「ひすい」が緑色であしらわれた句集。「ひすい(翡翠)」は江見さんの名前、翠から名づけられ、見返しにも緑が使われている。表紙をめくると、定年まで小学校の教師を勤めた江見さんが卒業する子ども達に送った色紙、好きだったキルトや編物の展示会の写真、最近飼いだした愛犬の写真が巻頭をカラーで飾り、句集は第1章「病をのりこえて」から始まる。早くに夫を亡くしたこと、定年後の何不自由ない生活から一転して、心を病み長く闘病したこと、周りの理解を得て自分を取り戻したときにはまた、別の病気、リンパ腫に侵されていたことなど人生にとって負ともいえる壮絶な事実が淡々とつづられている。「書くことにためらいもあったが、病を克服したことを知ってもらうことで、同じ病気の人や苦しみを抱えている人に勇気を与えることができれば」と江見さんは句集に自分の体験を書くことにしたという。
抗がん剤投与を受ける病床にあって、病院のロビーに展示してあった川柳を目にし、自分も川柳を詠んでみようと、ノートに書きとめたものが、いつしか100首近くになり、退院したら「つたない句だけれど、思い切って冊子にまとめて、お世話になった人たちに差し上げよう」と決意、早速、印刷会社に自費出版の相談をし、退院後も句作に励み、俳句と川柳のノート2冊が100ページの立派な句集となって完成した。
1ページに2首と読みやすく、句からは江見さんの日常が見えてくるようで、親しみやすく、闘病の句からは勇気がもらえる。
きれいだね子犬とともに花火みる
クルマユリ気高い姿凛と咲く
なでしこが瓶に活けられ勝祝う
病いえのちの人生人のため
冗談を言わぬ主治医を笑わせる
これからの人生はフロク「忘己利他」の精神でという江見さん。第2集を目指してさらに句作にも励む。