8月16日から9月23日まで上演の花組宝塚大劇場公演は、イタリアオペラの傑作を題材とした『愛と革命の詩―アンドレア・シェニエ―』と、ショー・オルケスタ『Mr. Swing!』の2本立て。 数々の抜擢にこたえ輝きを増す芹香斗亜、歌劇100周年に向け、伝統ある宝塚の様式美をしっかりと習得したいと誓い、舞台に立つ。
8月16日に初日を迎える花組宝塚大劇場公演は『愛と革命の詩―アンドレア・シェニエ―』~オペラ「アンドレア・シェニエ」より~、と『Mr.Swing!』の二本立てだ。いま、のりにのっている花組によるショー『Mr.Swing!』は、昨年7月から10月にかけて宝塚大劇場と東京宝塚劇場で上演された『CONGA‼』以来であり、ぜひ観ておきたい舞台である。その見所の一つが、トップスター蘭寿とむと3名の若手男役スターが役替りで扮する「踊る女」とのデュエットダンス。8月30日から9月12日までの2週間、「踊る女」を演じるのが芹香斗亜さんだ。2007年に初舞台を踏んだ第93期生の芹香斗亜さんは、宝塚歌劇の次代を担う逸材であり、歌劇団内外から大きな期待がかかる大型新人である。
「尊敬するトップスターの蘭寿とむさんとデュエットダンスを踊らせていただくお話をお聞きしたときは、本当に驚きました。私は女役をするのも初めてなので、うれしさと課題とが一緒にやってきた感じでしたが、その時は宝塚バウホールで初めて主演させていただいた『フォーエバー・ガーシュイン』の初日を2,3日後に控えていたので、舞台に集中しなければと自分に言い聞かせました」
そのバウ初主演公演で得たものを、この宝塚大劇場公演で生かすことになる。「『オーシャンズ11』の時、蘭寿さんが、みんなが生き生きと楽しそうなのがうれしいとおっしゃっていたんです。私もバウホール公演のときにみんなが生き生きと前向きにお稽古してくれたことがすごくうれしくて、蘭寿さんがおっしゃったことは、こういうことなのかと少し分かったような気がしました。これからはより一層前向きに楽しんで取り組み、組全体に貢献したいと思います」
11日間、16回に及ぶバウ主演経験を経て、さらに輝きを増す芹香斗亜さん。イタリアの作曲家ウンベルト・ジョルダーノによるオペラ「アンドレア・シェニエ」をベースにしたミュージカル『愛と革命の詩―アンドレア・シェニエ―』では、革命詩人アンドレア・シェニエの学友で貴族のシャルル=ルイ・トリュデーヌ・ド・モンティニーに扮している。
「王政派ではなく革命派の貴族で、新しい目線をもつ人間です。アンドレア・シェニエは友情をとても大事にしていて、友人のあり方が大きな意味をもたらすということなので、1場面1場面、こころして大切に演じたいと思います」
9月3日に行われる新人公演に主演することも決まった。今回で新人公演主演は4度目。オペラが題材だけに、主役アンドレア・シェニエが歌う曲数も多い。「素敵なオリジナル曲にすばらしい歌詞がついていて、ストーリーも精神的に深くて美しい作品です。余り気負いすぎてもよくありませんが、お客様に楽しんでいただけるようにがんばります。良い結果が出せれば最高ですが、与えられたことを努力してやりこなすための道のりが1番大事だと思います。少しハードルの高いことができるようになる、そのためのチャンスをいただいたことがすごくありがたいです」
数々の抜擢も臆せずこなしてきた芹香斗亜さん。でも小さい頃は引っ込み思案なところもあったそうだ。「研2の頃あたりからすごくプラス思考になりました。基本的にマイペースで、こだわりがなく、過去は振りかえらないタイプです」と笑顔がほころぶ。
まちがいなく、100年の歴史ある宝塚歌劇の未来を背負って立つ人財の一人だ。これから学びたいことを3つ挙げてもらった。一つ目、「ハンブルクバレエ初の日本人女性ソリストの大石裕香さんの振付を受けたとき、手の出し方一つにしても反対側の肩を意識するなど、刺激的でした。これを機会に新しい表現方法も勉強したいと思います」。二つ目、「ダンスは力を抜くことでより大きな動きに見えることを蘭寿とむさんに教えていただきました。余裕の備わった大人の魅力をマスターしたいです」。三つ目、「100年も続くのはすごいこと。私も宝塚の伝統を下級生に伝えられるように、宝塚の様式美をしっかりと習得したいです」
2007年『シークレット・ハンター』で初舞台、星組に配属。10年『愛と青春の旅だち』で新人公演初主演。12年4月花組へ組替え。13年6月『フォーエバー・ガーシュイン』でバウ初主演。
出身/兵庫県 愛称・キキ