7月8日まで上演中の星組宝塚大劇場公演は、世界で最も知られている永遠の純愛物語をフランスでミュージカル化した『ロミオとジュリエット』。2010年星組により初上陸、翌年雪組で、2012年には月組で再演され絶賛を博したラブストーリーが、初演を務めた星組により再び宝塚大劇場で上演されている。 硬軟自在の実力派スター・天寿光希がマーキューシオとパリスを役替わりで演じ、よりグレードアップしたステージをくりひろげている。
台湾公演と梅田芸術劇場公演『南太平洋』とに分かれて活動していた星組が、約4ヶ月ぶりに全員揃って『ロミオとジュリエット』を宝塚大劇場で上演中だ。この、フランス発ミュージカル『ロミオとジュリエット』を日本で初めて上演したのが、宝塚歌劇団星組である。2010年のことで、選抜メンバーによる梅田芸術劇場と博多座での公演だった。その後、’11年に雪組、’12年に月組でも上演し、このたび5月31日に宝塚大劇場星組公演『ロミオとジュリエット』の初日の幕が上がった。7月26日には東京宝塚劇場公演もスタートする。
今公演は主要キャストの役替りが大きな話題になっており、ティボルト、ベンヴォーリオ、マーキューシオ、パリス、死、愛がすべてダブルキャストだ。その中で、初めてのダブルキャストに挑んでいるのが第91期生の天寿光希さん。「ロミオの親友で、領主ヴェローナ大公の甥のマーキューシオと、ヴェローナ随一の富豪でジュリエットに結婚を申し込むパリスを、壱城あずささんと役替りで演じています。お客様にとって初演のイメージは忘れがたいものがあると思いますので、紅ゆずるさんが創られたマーキューシオ像を壊さずに、いかに私らしさを加えて新しいイメージを創り上げられるか、いつもの公演とは違うむずかしさを感じています」
初めて演じるマーキューシオに対して、パリスは天寿光希さんが初演で演じた役である。「マーキューシオをさせていただけるとわかったときは、個性が強い魅力的な役だと思っていたので、ものすごくうれしかったです。一方で、パリスは初演から年月が経っている分、成長していて当たり前。お稽古中から3年前の自分との戦いでした」。
天寿光希さんには似たような経験が、もう一つある。2011年に『めぐり会いは再び―My only shinin`star―』で演じたユリウスを、約2年後に続編『めぐり会いは再び2nd~Star Bride~』で演じたときのことだ。「続編なので物語の中の年月も経過しています。私だけでなくユリウス自身が成長していなければなりません。年月を隔てて同じ役を演じることのむずかしさを痛感しました」
芝居のうまさに定評がある天寿光希さんだからこその感想だろう。
初演時はフランス版やハンガリー版の舞台しか参考にできるものがなく、どの場面の歌なのかもわからないまま、すべてが白紙に近い状態で稽古を始めなければならなかった。一方、今回は資料こそ豊富だが、すでに宝塚歌劇3公演分のイメージができ上がっている分、観客の期待は大きく膨らんでいる。
「上級生のかたがたの退団もあり、今回は初演とはキャストがかなりちがいます。トップスターの柚希礼音さんが下級生にも声をかけながら、組をリードしてくださっています。私は柚希さんと親友役のお芝居をさせていただくのが初めてで、はじめは緊張していたのですが、柚希さんの目があまりにもキラキラしていらっしゃることに感動し、気持ちを明るく保つことができました。すばらしいことを身をもって教えていただけるのは、ありがたいこと。その空気感を忘れないようにして、上級生と下級生との架け橋になれたらと思っています」
天寿光希さんが入団前に子役として舞台経験があったことは、よく知られているが、女優ではなく宝塚スターの道を選んだ理由は何だったのか、お聞きすると、
「秋田で育ち、父の仕事の関係で東京に転勤したときに、思い出作りのためにミュージカルに挑戦しました。その頃、宝塚歌劇を初めて観に行ったのが、安寿ミラさんの退団公演『哀しみのコルドバ』『メガ・ヴィジョン』でした。このように素敵な世界が存在していることに驚き、それからは宝塚を観に行くために毎日がんばろうと思えるようになりました。小学6年生で秋田に戻ってからも、お小遣いをためて東京まで何度か観に行きました。
宝塚音楽学校を受験すると決めてから歌とダンスを習いに行ったそうだが、子役時代の活動歴は天寿さんの財産。2005年、宝塚歌劇団に首席で入団した。
「宝塚は大好きで入った場所です。悔いが残らないように、1回1回命を賭けて舞台に立っています。そういう毎日を過ごせることが幸せです。お客様に、また観たいと思っていただけるように、これからも精進するのみです」
2005年『エンター・ザ・レビュー』で初舞台、星組に配属。11年『オーシャンズ11』新人公演でテリー・ベネディクト役を演じ好評を博す。
出身/秋田県 愛称・みっきぃ、みっく