3月15日から4月15日まで上演の宙組宝塚大劇場公演は、「岩窟王」のタイトルでも知られ、幾度となく映画化、舞台化されたデュマの名作『モンテ・クリスト伯』と、宝塚歌劇が繰り広げてきたショー、レビューの名作、名場面の再演を盛り込んだ『Amour de 99!!―99年の愛―』の2本立て。 長身を活かした舞台姿が美しい七海ひろき、大好きな芝居を楽しみながら経験値を高め、存在感を出す。
新生宙組による第2弾は、アレクサンドル=デュマ・ペール原作の『モンテ・クリスト伯』とショー『Amour de 99!!―99年の愛―』。3月15日、宝塚大劇場公演がスタートする。
日本でも「岩窟王」の題名でよく読まれているデュマの名作「モンテ・クリスト伯」は、無実の罪で投獄されたエドモン・ダンテスの復讐物語だが、石田昌也氏の脚本は、エドモンと彼の婚約者メルセデスとの愛の葛藤に焦点を当て、宝塚歌劇らしいロマンに満ちている。
「私はルイジ・ヴァンパという役で、原作では山賊なのですが、この公演では密輸船のボスという設定になっています。脱獄して漂流中のエドモンを助けた縁で、彼の復讐に協力するのですが、私たち密輸船チームはお客様が息抜きできる場面を担っているように思います。ヴァンパは明るい海の男。人生を自由に謳歌している感じを出したいです」
ご自身の芸名にも海がある七海ひろきさん。2003年に初舞台を踏んだ第89期生。新生宙組のホープである。大きな名前ですね、というと、「覚えやすいのがいいと思ったのと、本名に海の字があるので、海を使いたいと思いました」
今回、密輸船のボス、ヴァンパを演じるために海賊っぽい役づくりを目指したという。
「『パイレーツ・オブ・カリビアン』などの海賊物や、『ピーターパン』などのDVDも見ました。原作は1月の博多座公演(『銀河英雄伝説TAKARAZUKA』)中にも読みましたが、人間模様がすごく面白くて夢中になりました。原作ではルイジ・ヴァンパの物語が7巻中3巻もあるんですが、デュマが新聞連載中、読者に人気のあるキャラクターについて外伝のように書き込んでいったからだそうです。その中に、ヴァンパはもともと羊飼いの心優しい少年だったという物語があり、役づくりの参考にしました。1場面1場面が印象深くお客様の心に刻まれるように演じたいと思います」 芝居が大好きな七海ひろきさんらしい言葉だ。
最近、注目度が急上昇している。「『銀河英雄伝説TAKARAZUKA』の公演中から、いろんな方にお手紙をいただくようになりました。以前から注目はしていたのですが、今回初めて手紙を書きましたという方が多く、うれしいですね」
『銀河英雄伝説TAKARAZUKA』は新生宙組のお披露目公演。七海ひろきさんは銀河帝国の若き軍人ウォルフガング・ミッターマイヤーを宝塚大劇場と東京宝塚劇場で演じたあと、銀河帝国の名将ラインハルト・フォン・ローエングラムの参謀としてラインハルトの影を担う義眼のパウル・フォン・オーベルシュタインを博多座で演じた。ミッターマイヤーとオーベルシュタインは白と黒ほどに雰囲気がちがう役である。同じ場面で同じ台詞を聞いても役がちがうと感じ方もちがってくる。何よりも作品の捉え方そのものが変化したという。
「同じ作品で2つの役を経験できたことがとてもいい勉強になりました。博多座公演では、私なりのオーベルシュタインをつくりたいと思い、改めて原作を読み直しましたが、原作がある作品だからこその難しさをすごく感じました。決して派手な役ではないので、いかに存在感を出すかがポイントで、小池先生には、もっと自分を前に押し出すようにとアドバイスをいただきました。私は役に影響されるタイプなので、私生活でも考え方の傾向が暗くなり、公演中はずっと、何か重いものを背負っている感じでした(笑)。『モンテ・クリスト伯』ではまた新しい七海ひろきを観ていただきたいと思います」
宙組としては半年ぶり、そして新生宙組では初めてのショー『Amour de 99!!―99年の愛―』は、宝塚歌劇99周年のオマージュだ。
「1990年代以降の作品しか観ていないので、知らない曲がたくさんありましたが、時代を超えた味わいがあり、先生方や先輩方の強いパワーを感じています」
宝塚歌劇100周年に向けて、ますます活躍が期待される七海ひろきさん。
「宙組は今、上級生はもちろん、下級生一人ひとりがやる気に満ちてがんばっていますので、私も負けずに励みたいと思います」
何事も意識しすぎず、楽しみながら努める、というのが七海ひろき流だ。簡単なようだが、奥が深く、なかなか真似はできない。
2003年『花の宝塚風土記』で初舞台、宙組に配属。9年『薔薇に降る雨』で新人公演初主演。
出身/茨城県 愛称・かい