宝塚歌劇99周年の幕開けを飾る月組・宝塚大劇場公演は、2月4日まで上演中、1974年に初演され社会現象を引き起こした舞台、『ベルサイユのばら』―オスカルとアンドレ編―。 劇画から飛び出してきたような魅力が満開の美弥るりか、宝塚歌劇100周年に向け、自らも向上しつつ、若い月組をリードする頼もしい存在に。
星組から月組に異動後、めざましい活躍ぶりで観客の視線を集め続ける美弥るりかさんが、2013年1月1日から上演中の月組宝塚大劇場公演『ベルサイユのばら』―オスカルとアンドレ編―にベルナール役とジェローデル役で出演している。
「2006年に、研3で星組公演のフェルゼンとマリー・アントワネット編に出演しましたが、今回また、別バージョンに出られることを、うれしく思っています。ベルナールは歴史を動かした市民たちを代表する存在。リーダーとしての責任を感じます。市民たちの心の叫び、魂、エネルギーをしっかりお客様にお伝えできるよう、目標に向かって一直線に突き進む男の姿を心を込めて演じたいと思います。この公演では役替わりがあり、私は1月7日から13日まで貴族のジェローデルを演じます。ジェローデルは立っているだけで品格に満ちて所作も美しく、歌うように台詞を言わなければいけません。どちらも『ベルサイユのばら』の伝統的な要素をギュッと詰め込んで演じられるよう、歴代の先輩方の演技をお手本にしてお稽古を重ねています」
1974年に初演され、今では宝塚歌劇の代名詞と言われる『ベルサイユのばら』は、再演のたびにブームを巻き起こす名作中の名作だ。「お客様にとって特別な舞台である『ベルサイユのばら』は、演じる側にとっても特別な作品です。『ベルサイユのばら』では歴代の方々が演じてこられた伝統の形にいかに嵌るかが問われ、『そうそう、これが“ベルばら”なのよね』とお客様が思われるようなものを演じることが大事なんです」
美弥るりかさん自身は、初の再演で再びタカラヅカブームを巻き起こした“平成のベルサイユのばら”以降、すべて観ているという。その熱烈な宝塚ファン時代を振り返ると「小学生の頃、テレビで『珈琲カルナバル』を見て宝塚歌劇が好きになり、入り待ち、出待ちもしました(笑)。劇場での初観劇は『PUCK』。それまでもジャズダンスは習っていましたが、宝塚に入るためには基礎をレッスンしなければと思い、クラシックバレエを習って受験に臨みました」
2003年に初舞台を踏んだ第89期生の美弥るりかさんは、2012年3月まで星組で男役としての研鑽を積んだ。月組への異動直前の2011年11月に幕を上げた話題作『オーシャンズ11』で演じたリビングストンは、美弥るりかさんの新しい魅力に満ち、忘れられない役の一つだ。「脚本・演出の小池修一郎先生に、やったことのないような役だろうから、この機会に殻を破りなさい、と言っていただき、チャンスを無駄にしてはいけないと、思い切って髪型を全く変え、衣装もほとんど私服でコーディネートしました。それまで割とシリアスな役が多かったので、意外なキャスティングと言われましたが、楽しかったです」
2012年4月、月組生として初の舞台に立ち、『ロミオとジュリエット』のマーキューシオを熱演した美弥るりかさんは10~11月、初めて全国ツアー公演に参加して『愛するには短すぎる』の2番手役アンソニーを好演した。「マーキューシオは自分にない要素の多い役だったので、なかなか役がつかめず初日まで悩みましたし、こんなに苦労した役はないと思います。マーキューシオは2幕の途中で死ぬのですが、毎回、本当に死んでしまう覚悟で演じましたし、自分の実力以上のものを出せるようにがんばったので、千秋楽を迎えたときのうれしさと達成感はひとしおでした。次の『愛するには短すぎる』はスーツ物でコメディ的要素がある上、アンソニーはストーリーを引っ張っていく役。稽古場ではむずかしい役だと感じていましたが、全国各地のお客さまが笑って拍手をしてくださったんです。たくさんの笑い声や拍手に支えていただきました」
そして、いよいよベルナールに扮する美弥るりかさん。この1年を振り返っていただくと、「上級生がたくさんいらした星組とちがって、月組では私が上級生になりますので、自ら向上しつつ、みんなを引っ張っていかなければならない責任を感じています。舞台も出番が増え、一つ一つの課題を克服するのに精一杯で、気づいたら年末という感じでした。これからはもう少し余裕をもって、下級生をリードできる頼もしい存在だと思っていただけるように、これまでどおり日々努力を続けたいと思います」
追伸のような言葉が続く。「いろんな機会を与えていただけることに、感謝の気持ちを忘れずに」
2003年『花の宝塚風土記』で初舞台、星組に配属。10年『ハプスブルクの宝剣』で新人公演初主演。12年4月、月組に組替え。6月『ロミオとジュリエット』でマーキューシオを演じ好評を得る。
出身/茨城県 愛称・るりか、みやちゃん