11月12日まで上演中の雪組・宝塚大劇場公演は、漫画界の巨匠村上もとか氏の作品を原作とし、ドラマ化によるヒットも記憶に新しい、グランステージ『JIN ―仁― 』と、ショー・ファンタジー『GOLD SPARK! ―この一瞬を永遠に―』の2本立て。 数々の抜擢にこたえる男役ホープの彩風咲奈、本公演では刺客の高岡玄斉、新人公演では主役の南方仁を演じ、音月桂・舞羽美海トップコンビのサヨナラ公演を盛り上げる。
現代から幕末の江戸時代にタイムスリップした脳外科医・南方仁は、過去の人間の運命や歴史を変えてしまうと知りながらも、人命救助のため近代医療を実現していく—。
今秋、宝塚歌劇団雪組により上演される『JIN ―仁―』は、シリーズ累計800万部突破の記録をもつ村上もとか氏の漫画作品「JIN ―仁―」が原作。2009年にテレビドラマ化され、2011年には第15回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞したSF的要素の強い医療漫画だが、宝塚版は時空を超えた純愛と友情が中心のヒューマンドラマに仕上げている。
「今夏、『フットルース』で音月桂さんの同級生役をさせていただいたとき、ごく近くで音月さんの強いエネルギーを感じることができ、すごく刺激を受けました。音月さんがサヨナラ公演で私たちに伝えようとされていることを、一つ残らずキャッチしたいと思います」と、新人公演でトップ音月桂の宝塚最後の役・南方仁を演じる彩風咲奈さんは、凛とした佇まいで話し始める。
彩風咲奈さんは2007年に首席入団した第93期生。愛媛県大洲市の出身だ。入団した年には宝塚音楽学校生徒募集の広告モデルに起用され、また阪急電鉄の初詣ポスターのモデルにもなった。
新人公演でも早くから主要な役どころを与えられ、研3の終わりの2010年『ソルフェリーノの夜明け』で新人公演初主演を果たし、その後も『ロジェ』や『ロミオとジュリエット』などの新人公演で立て続けに主演。宝塚バウホール公演の初主演も2011年、『灼熱の彼方~「オデュセウス編」~』で叶い、確実に成果を積んできている。
恵まれたスター性をもつ彩風咲奈さんだが、昨年1年間は新人公演の主役を演じていない。「この1年間は様々な役を演じさせていただき、とても勉強になりました。おかげで視野がずいぶん広がったと思います。特に『ドン・カルロス』で緒月遠麻さんの役をさせていただいたとき、緒月さんから『舞台は主役だけが良ければいいのではなくて、周りの皆が良くてこそ成功と言えるのよ』とご指導いただいたことが忘れられません。自分ではいつも精一杯やっているつもりでしたが、自分しか見えていなかったかもしれない。これからは『楽しかった』という個人的な思いだけで1日を終わるのではなく、明日はこうしてみようと冷静に全体を振り返れる自分になろうと決めました。南方仁役で久しぶりに新人公演で主演をさせていただきますが、仁のように命のつながり、人とのつながりを大切にする、一本、芯の通った彩風咲奈をみていただければと思います」
10月30日の新人公演本番までは、本公演で京都見廻組の刺客・高岡玄斉役を演じたあと、夜に南方仁の稽古が続く。少し痩せたように見えるのは「一つの節目を越え、意識の変化を経験したからではないでしょうか」
宝塚歌劇が100周年を迎える2014年、彩風咲奈さんは新人公演を卒業する。
「これまでは自分がなりたいと思う男役像を探してきましたが、一つに決めるのはつまらないと思うようになりました。『彩風咲奈にやらせてみたい、これをさせるのが楽しみ』と言っていただけるような男役を目指します。たとえば伝統的な男役はもちろんですが、熱くてキザ、クールでカッコいい、宝塚でしか観られない男役を勉強していきたいです」
同時上演のショー『GOLD SPARK! —この一瞬を永遠に—』では、今この瞬間に輝く男役・彩風咲奈さんを目に焼き付けておきたい。
2007年『シークレット・ハンター』で初舞台、雪組に配属。
10年『ソルフェリーノの夜明け』新人公演にて初主演。11年1月『ロミオとジュリエット』で死を演じ、新人公演ではロミオを演じる。同年7月バウ・ホール公演『灼熱の彼方~「オデュセウス編」~』でバウ初主演。
出身/愛媛県 愛称・さき