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宙組 緒月 遠麻

10月8日まで上演中の宙組・宝塚大劇場公演は、人気作家・田中芳樹氏による大ベストセラーSF小説を原作とする『銀河英雄伝説』。遥かな未来、限りなく広がる銀河に、個性的な数々のキャラクターにより繰り広げられる歴史物語が、新しい魅力をたたえ宝塚歌劇の舞台に初登場する。 長身を活かして男くさい男役を極める緒月遠麻、組替えを経て、新トップスター凰稀かなめと共に新生宙組の舞台を担う。

劇画を超える舞台を! 新生宙組で観せる

 8月31日、新生宙組披露公演『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』が開幕した。原作の「銀河英雄伝説」は、田中芳樹氏の大ベストセラーSF小説で劇画のファンも多い。今作の主人公は銀河帝国皇帝ラインハルトだが、自由惑星同盟の英雄ヤン・ウェンリーの人気もすごいのだ。そのヤンを演じるのが、2000年に初舞台を踏んだ第86期生の緒月遠麻さん。5月、雪組から宙組に組替えして初めての宝塚大劇場公演である。

 「まさか研12になって組替えするとは思わなかったので、びっくりしました。なぜか、ずっと雪組にいるものと思い込んでいたんです。今は新しい環境で新しいメンバーに出会い、すごくいい刺激を受けています。宙組の下級生は初めて絡む人たちばかりなんですよ」

 新トップスター凰稀かなめと緒月遠麻さんは同期生だ。しかも2009年まで、雪組で同じ舞台に立っていた。同場面で対称の位置に並ぶことも多く、自主稽古で一緒に汗を流した仲。新人公演で、のちにトップになる水夏希や貴城けいの役を演じてきた緒月遠麻さんは、同じく主要な役どころを演じる凰稀かなめと何度も台詞を交わしている。そんな二人が今回、本公演の大舞台で出会った。

 「凰稀かなめは劇画から飛び出してきたように、ラインハルトにぴったり嵌っています。脚本・演出の小池修一郎先生も、今の宙組でこそ出来る作品だと。みんなで力を合わせて頑張ろうという気持ちでいっぱいですね」

 2000年以降の入団者がほとんどを占める現在の宙組で、緒月遠麻さんが担うものは舞台だけではない。「雪組時代からずっと変わらずにやり続けていることがあります。下級生の芝居を見て気になる部分があると、些細なことでも、すぐ本人に伝えるようにしているんです。私もそうやって育てていただいたし、大事なことは伝えていきたい。あくまでも私の意見だけど、ということは必ず付け加えています」

 そんな緒月遠麻さんが、「すごく魅力的な役。やりがいを感じています」というのがヤン・ウェンリーなのだ。「宇宙戦争中の物語なのに、ヤンの場面は私生活が描かれていて、ほっこりできます。私自身、構えずに自然と演じられ、いつのまにかヤンのやさしさに深く共感しています。ビジュアル的にも、劇画で細かく描かれているヤンのイメージそのままを楽しんでいただけるのではないでしょうか」

 原作の「銀河英雄伝説」は、若い男優たちによってすでに舞台化もされている。100周年に迫る宝塚歌劇の歴史の中で、今ほど男性が美しさを競える時代はないだろう。「宝塚歌劇では女性が男性を演じるために、日々男性よりも男性を研究していますので、男性よりも強くてカッコいい男性像をお見せできると思います。今回の舞台では、劇画では軽く描かれている人物や人間関係をより深く濃く、丁寧に描いています。たとえ出番が多くない役でも、スパイスが効いた演技でインパクトを残すのも、宝塚の伝統。たっぷりとお楽しみください」

 鍛えた技、身体能力がなければ、こうはいかない。小さい頃はおとなしくて、華やかな舞台に立つことなど自分でも想像できなかった、という緒月遠麻さん。「宝塚歌劇があることを教えてくれた友達と、受験できることを教えてくれた友達に、今もずっと感謝し通しです」

 男くさい男役が好き、と言い切る。「男らしい男役は宝塚歌劇には絶対必要で、大切な存在。私はそれを極めたいと思っています。過去に上演された宝塚歌劇のビデオをよく見ますし、CS放送にも加入しているので、研究材料はたくさんあります」

 お稽古が終わってからCS放送を見るのが楽しみな緒月遠麻さんである。

緒月 遠麻さん

2000年『源氏物語あさきゆめみし』で初舞台、同年雪組に配属。
04年『スサノオ』新人公演でアセオトナ役に抜擢。11年『ロミオとジュリエット』ではティボルトを野性的に描き出し好評を得る。12年5月、宙組に組替え。
出身/愛知県 愛称・きたろう、づっくん

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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