トップページ > 2012年08月号 >フェアリーインタビュー

月組 珠城 りょう

7月23日まで上演中の月組宝塚大劇場公演は、2010年星組により日本初上陸、翌年雪組により再演され絶賛を博した、世界で最も有名な純愛物語をフレンチ・ミュージカルにした『ロミオとジュリエット』。 新生月組による公演では、抜擢が続く注目の若手スター・珠城りょうがダンスで「死」を演じ、新人公演では憧れのロミオに挑む。

幕開けに登場し、 雄弁に踊りながら物語へと誘う「死」

 7月23日まで宝塚大劇場では、月組公演『ロミオとジュリエット』を上演中。その新人公演でロミオを演じるのが、2008年に月組公演『ME AND MY GIRL』で初舞台を踏んだ第94期生の珠城りょうさんである。

 「『ロミオとジュリエット』は大好きなミュージカルです。日本初演の星組公演はDVDを買って何度も観ましたし、ジュリエットが役替りだった雪組公演はどちらも観ています。在団中に絶対、一度は出演したいと思っていた作品にこんなに早く出演でき、新人公演でロミオをさせていただけることになり、本当にうれしいです」

 珠城りょうさんにとって新人公演主演はすでに3度目。2010年5月『THE SCARLET PIMPERNEL』のパーシー・ブレイクニー役に抜擢されたのが最初で、このとき珠城りょうさんはまだ研3だった。2012年2月『エドワード8世―王冠を賭けた恋』のデイヴィッド・ウィンザーを演じたのが2度目で研4のとき。そして今回、研5でロミオに挑戦する。

 「シェイクスピア原作の『ロミオとジュリエット』は世界中の誰もが知っている純愛物語。ストーリー自体とても感動的ですが、ミュージカル化したジェラール・プレスギュルヴィックさんの音楽のすばらしさに魅了されています。登場人物は多くはないものの、それぞれの最も深い思いをテーマにして持ち歌がつくられていて、そのどれもに胸が打たれました。ロミオが歌う曲はフランス独特の音階だそうで、難しいですが、フレンチ・ミュージカルであることを意識しながら、演出の小池修一郎先生にしっかりついていきたいです」

 歌うことが大好きな珠城りょうさんは、新人公演初主演の『THE SCARLET PIMPERNEL』のパーシー役でも、たくさんの楽曲を歌いこなした。当時は初めての大役で不安もあったというが、恐いもの知らずの学年でもあり、支えてくれる上級生の数も多かった。今はまだ研5とはいえ、研7が上限の新人公演メンバー中、上から数える方が早い学年だ。

 「若者たちの物語なのでフレッシュに、そして一緒にお芝居をする人たちとのつながりを大切にして、下級生が自然とついてきてくれるように誠実に舞台を務めたいと思います。特に今回、ジュリエットを演じる咲妃みゆは、新人公演初ヒロインなので、少しでも気持ちをひっぱってあげたいです」
 注目株の珠城りょうさんは、本公演でも“死”という重要な役どころを演じている。
 「一切台詞を言わず、身体だけで表現するのはすごく難しいです。ロミオとジュリエットが出会ったときに“愛”が現れるのですが、“死”は憎しみや不安などの負の感情を抱いたときや、運命をあやつる存在として現れます。“愛”と“死”が表裏一体であることを分かりやすく伝えるために、小池先生が宝塚版に“愛”という役をつくられたので、存在理由をきちんとお伝えできるよう、私はしっかりと“死”の色を出していきたいと思います」

 珠城りょうさんがこれまで演じてきたのは、明るくて溌剌とした役が多い。目に見えないものを具現化した“死”の役は、珠城りょうさんにとって新た挑戦である。
 「新人公演でもお世話になった霧矢大夢さんのプロ意識の高さに、はっとさせられてきました。トップさんでありながら誰よりも自分自身に厳しく、舞台人としても人としても尊敬しています。新トップの龍真咲さんも舞台に誠実なかた。『HAMLET‼』で初めてお芝居させていただいたとき、悩む私を最後まで見捨てずにお稽古して下さいました。新生月組の戦力になれるよう、がんばります」
 『ロミオとジュリエット』の幕開けの序曲は神秘的だ。舞台の中央に登場した珠城りょうさんの“死”と、“愛”が、雄弁に踊りながら物語の世界に誘い始める。

 

珠城 りょうさん

2008年『ME AND MY GIRL』で初舞台、月組に配属。
2010年『THE SCARLET PIMPERNEL』で新人公演初主演。
出身/愛知県 愛称・りょう、たまき

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
宝塚の情報誌ウィズたからづか

ウィズたからづかの最新コンテンツ