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月組 煌月 爽矢

6月22日から7月23日まで上演の月組宝塚大劇場公演は、世界で最も知られている永遠の純愛物語をフランスでミュージカル化した『ロミオとジュリエット』。2010年星組により日本初上陸、翌年雪組により再演され絶賛を博した。新生月組による公演では、月組若手スター・煌月爽矢が「愛」を表現、史上最高のラブストーリーで劇場を感動に包む。

初の女役はダンスで表現する 『ロミオとジュリエット』の「愛」

  「ショ―などで男役が1場面だけ女性に扮して踊ることがあります。素敵だな、私もやってみたいなと思っていましたが、『ロミオとジュリエット』で通し役の“愛”を演じることになるとは想像もしていませんでした」と、煌月爽矢さん。宙組公演『NEVER SAY GOODBYE』で2006年、初舞台を踏んだ第92期生の男役スターだ。

 6月22日、新生月組披露公演『ロミオとジュリエット』が宝塚大劇場で初日を迎える。
 その稽古が始まった5月上旬、香盤発表を見た煌月爽矢さんは「びっくりした」という。“愛”を演じるのは誰か、演目が発表されると同時に宝塚ファンの間でも話題になっていた。“愛”という役には台詞が全くなく、ダンスだけによる身体表現が求められる。“愛”は人間ではないが、女役であり、これまで男役スターが演じてきた。

 ジェラール・プレスギュルヴィック作詞・作曲によるミュージカル『ロミオとジュリエット』には“死”の役が登場する。2010年7月、小池修一郎氏の潤色・演出による宝塚版を星組が演じたのが日本初演。このとき“愛”が生まれた。
 「“愛”と“死”は同じ振りを踊ることもあり、“死”が“愛”をリフトすることもあります。でも同じ気持ちになることは決してありません。“死”はいつも二人を破滅に導こうとしていて、ロミオの追放が決まってジュリエットに会いに行く場面は切なすぎて辛いです。やはり宝塚のテーマは愛。“愛”は宝塚版、独自のものですから、宝塚ならではの、あったかくて、やさしい“愛”を感じていただけるよう演じたいです」

 よく知られている通り、シェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』に着想を得て創られたのが『WEST SIDE STORY』だが、煌月爽矢さんに宝塚音楽学校受験を決意させた舞台が、ほかでもない、月組1000days劇場公演『WEST SIDE STORY』なのである。宝塚歌劇に興味を示さない娘に、女の子なら一度は宝塚を観たほうがいいわよ、と母が勧めた。
 「とにかく男役がカッコよかった。絶対、男役になる、宝塚に入ると決めたとたん、それまで嫌々通っていたバレエのレッスンが大好きになりましたね」
 目標を見つけてしまった十代の煌月爽矢さんは、自ら信じる道をまっしぐらに突き進み、難関を突破して宝塚音楽学校に入学した。
「初舞台は感動しましたが、1番うれしかったのは月組に配属されたとき。自分の家ができたような気がしました」

 煌月爽矢さんは新人公演でも早くから主要な役を演じてきた。2009年6月『エリザベート』のルドルフ、10月『ラストプレイ』のクリストファー、2010年5月『THE SCARLET PIMPERNEL』のアルマン、9月『ジプシー男爵』のパリ。そして2011年3月『バラの国の王子』で、主役に抜擢された。
 「新人公演主演は予想していなかったので、お伺いした瞬間、本当に頭の中が真っ白になりました。ファン時代から憧れて観ていたスターの方の役を、私がさせていただいていいのかな、と信じられない気持ちでした。でも本番当日、舞台袖からお客さまの姿が見えた瞬間、『とにかくやらなければ』と集中できた記憶があります」

 月組は今、研7までの新人公演メンバーが占める割合が多い。
 「上級生が多いと組が締まるというイメージも確かにあるのですが、そうじゃない場合、フレッシュで元気いっぱいの若さが舞台で弾けたときに必ずお客さまに喜んでいただけるはずです。上級生に頼るのではなく、一人ひとりががんばらなければ。『ロミオとジュリエット』は新生月組にぴったりの演目ですから、ぜひ、劇場でごらんいただきたいと思います」

 7月10日、18時開演の新人公演で煌月爽矢さんが演じるティボルトも注目したい。

煌月 爽矢さん

2006年『NEVER SAY GOODBYE』で初舞台、月組に配属。
2011年『バラの国の王子』で新人公演初主演。
出身/東京都 愛称・ゆうき

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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