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星組 十輝 いりす

5月18日から6月18日まで上演の星組宝塚大劇場公演は、ヨーロッパを舞台に、クラブのトップダンサーとオーディションを受けに来た娘との恋物語を中心に人生模様を描くミュージカル・プレイ『ダンサ セレナータ』と、星組のエネルギーが漲る熱いショー『Celebrity』の2本立て。 ダイナミックで優雅なダンスが魅力の十輝いりす、組替えを経て演技の引き出しを増やし、さらに向上を続ける。

宙組から星組へ 新たな自分に出会う

  15名が異動する大規模な組替え発表があったのは昨年12月2日だった。一度に10名以上の組替えが行われたのは2006年以来のこと。十輝いりすさんは2012年2月25日付けで宙組から星組に異動した。組替えが発表される数日前に歌劇団から直接、連絡を受けた十輝いりすさんは、「また新たな自分に出会えるチャンスなのでがんばろうと思いましたが、この学年で組替えがあるとは思いもしなかったので、お聞きした瞬間はびっくりしました」

 第85期生の十輝いりすさんは宙組が誕生した翌年の1999年、『ノバ・ボサ・ノバ』で初舞台を踏み、宙組に配属された。入団13年目の初組替えである。

 星組からは組長をはじめ5人が他組へ異動し、男役スター涼紫央も退団を発表した。そこに入ってきたのは十輝いりすさん、ただ一人。稽古初日の集合日はさすがに少し緊張したそうだが、「顔は知っていても話したことのない人たちがほとんどですから。でも集合日にやることは、どこの組でも基本的に同じ。星組の力になれるように、がんばります」と、相手をほっこりさせるような、いつものにこやかな表情だ。

 十輝いりすさんは、星組トップスターの柚希礼音とは同期で、音楽学校時代から不思議と仲がよかったという。
 「私は東京、柚希は大阪出身。特に接点があるわけではないのに、一緒にいると楽しい人。でも10年以上も経ってから同じ組になるなんて想像もしていませんでした」

 二人が芝居で絡むのは実に音楽学校以来のこと。その星組公演、ミュージカル『ダンサ セレナータ』が5月18日から6月18日まで宝塚大劇場で上演中だ。ショーは『Celebrity』。
 「本公演でのお芝居は久しぶりのハードボイルド。舞台はポルトガル。私は祖国の独立のために命を賭ける革命家アンジェロを演じます。中盤、捕らえられて自白を強要され拷問を受けますが、絶対に口を割らない芯の強い人間です。アンジェロは夢咲扮するヒロイン・モニカの兄で、柚希扮する主人公イサアクがモニカに『君のお兄さんを助けるために手を尽くす』と行動をおこします」

 十輝いりすさんはこれまでも、物語の鍵となるような色の濃い役を演じてきた。たとえば『カサブランカ』の武器商人のセザール、『誰がために鐘は鳴る』のゲリラのプリミティボなど。『クラシコ・イタリアーノ』では主人公サルヴァトーレ・フェリのライバルのジャコモ・アジャーニを堂々と演じたのが記憶に新しい。

 「宙組を出たことで改めて宙組の良さを確認できたことが、私にとって財産になりました。と同時に、宙組とは又違う星組の良さが刺激になり、その一つひとつが新鮮のひと言に尽きます」
 長身揃いの宙組でもそのスマートな存在感がきわ立っていたが、星組ではどうなるのか、激しいビートで展開する熱いショー・グルーヴ『Celebrity』で確かめたい。

 ところで、星組公演の集合日まで久しぶりにまとまった休みがとれた十輝いりすさんは、2週間ほどロサンゼルスで過ごした。
 「シルク・ドゥ・ソレイユを観たり、レッスンしたり。体を動かすのが好きなこともありますが、体の大きさに合った筋力がないと踊れないんじゃないかと思っているので、バレエなどのレッスンはしっかり続けています」

 いつも冷静で落ち着いているように見られがちだが、稽古中の熱い十輝いりすさんの魅力も格別だ。
「宙組で培ってきた土台を大切にしながら、これから始まる星組での経験を吸収してさまざまな引き出しを増やし、舞台人としてさらに向上していきたいです」

 男役の逸材である。

十輝 いりすさん

1999年『ノバ・ボサ・ノバ』で初舞台、宙組に配属。
2006年『 Young bloods‼ 』バウ・ワークショップ初主演。12年2月星組へ組替え。
出身/東京都 愛称・まぁ、まさこ

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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