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月組 宇月 颯

3月5日まで上演中の月組宝塚大劇場公演は、英国王エドワード8世の虚像と実像を、国王退位に至るウォリスとの恋愛事件を軸に描くミュージカル『エドワード8世 ―王冠を賭けた恋―』と、青年の旅先でのトピックスを華やかなショーシーンで展開する『Misty Station―霧の終着駅―』の2本立て。キレのあるダンスが魅力の宇月颯が、俳優でダンサーのフレッド・アステアを演じ、月組トップコンビのサヨナラ公演を盛り上げる。

「エドワード8世」で 実在の人物アステアを、自分色に染めて

  月組トップスター霧矢大夢とトップ娘役の蒼乃夕妃の退団公演『エドワード8世』『Misty Station』が、3月5日まで宝塚大劇場で上演中。英国王エドワード8世の「王冠を賭けた恋」を描いた『エドワード8世』で、フレッド・アステアを演じているのが宇月颯さんだ。
「トップさんの退団公演となり、寂しい気持ちでいっぱいですが、私たちには舞台を創り上げる責任があります。霧矢さんが稽古の集合日におっしゃったように、舞台に対するスタンスも稽古の取り組み方も、これまでと変わらずしっかりやっていかなければと思ってます」

 とはいうものの、作品の中にサヨナラ公演のニュアンスが感じられ、つい感傷的になってしまうそうだが、「そんな特別な気持ちが舞台をよりよいものにしてくれることがあるので、気持ちは大切に、取り組み方は変わらずに、ということを大事にしたいですね」

 宝塚歌劇90周年の2004年、宇月颯さんは『スサノオ』で初舞台を踏んだ。通常、初舞台生の口上とラインダンスが観られるのは宝塚大劇場公演のみ。だが宇月颯さんら90期生は東京宝塚劇場公演にも出演し、「初舞台生ロケットのほかに、90人のロケットやお芝居の場面に出演できるなど、すごく贅沢な初舞台を経験させていただきました」

 その後、月組に配属された宇月颯さんは、新人公演で活躍する。『ME AND MYGIRL』のジェラルド、同じく『エリザベート』のルキーニのほか、本公演では専科の未沙のえるが演じた『ラスト プレイ』のグラハム、組長の越乃リュウが演じた『THE SCARLET PIMPERNEL』のロベスピエールなどに挑戦し、舞台経験を積んでいった。本公演で通し役がついたのは、『THE SCARLET PIMPERNEL』のときだ。次の『ジプシー男爵』で新人公演初主演を果たした。

 「この公演は最後の新人公演でした。新人公演の最後にこの経験をさせて頂けて、本当に沢山の事を学ぶ事ができました」
 今回のフレッド・アステア役は、実在の人物である。
 「香盤を見てアステア役と知り、台本を読み始めたら、やはり、あの俳優でダンサーのフレッド・アステア。その姿や動きを誰でも想像できる人物を演じることにプレッシャーがないといえば嘘になりますが、単に特徴を真似るだけではなく、宇月颯が演じるアステアを作りたいです。ダンスの場面を与えていただいているので、アステアの映像をたくさん見て、流れるようなステップに近づけるようお稽古しました。芝居をしているときと踊っているときのアステアが同一人物に見えることはもちろん、アステアがどういう思いで踊っているのか、感情をイメージすることでダンスの振りだけではないニュアンスをお伝えできればと思っています」

 幼少の頃から水泳と少林寺拳法で鍛えた身体能力が宇月颯さんの強み。さらに宝塚で自身の心身を鍛え、磨き上げた男役のダンスは、ショー『Misty Station』で堪能したい。
 「演出の齋藤先生も挑戦とおっしゃっているくらい、全場面がドラマティックなストーリーでつながっていて、暗転もほとんどありません。私は、人間ではない役にも挑戦しますし、あまりやった事のないジャンルの踊りもあるので、宇月颯のいろんな色を見ていただければうれしいです」

 2年後は宝塚歌劇100周年。思いをお聞きすると「初舞台生だった90周年のときには理解が及ばなかった歴史の重みを今、ひしひしと感じています。与えられた役を大切に演じながら、責任を持ち、100周年を盛り上げていけるよう、さらに高みを目指してしっかり精進したいと思います」これからの1作1作が100周年の盛り上がりにつながる。男役の、無限の可能性に挑み続ける宇月颯さんである。

宇月 颯さん

2004年『スサノオ』で初舞台、月組に配属。
09年『エリザベート』新人公演でルキーニを演じ、
10年『ジプシー男爵』新人公演初主演。
埼玉県出身/愛称・とし

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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