1月30日まで上演中の花組宝塚大劇場公演は、ロシアの文豪トルストイの傑作「復活」をミュージカル化した『復活―恋が終わり、愛が残った―』と、世界の名曲を素材に、それにまつわる思いを各景の主題とし、全体が一つの音楽詩として歌い上げる『カノン―Our Melody―』の2本立て。華やかな舞台姿にくわえて確かな演技で幅広い役を演じる華形ひかる。花組の伝統を受け継ぎ、男役の美しさを追求する。
花組宝塚大劇場公演、ミュージカル・プレイ『復活―恋が終わり、愛が残った―』とレビュー・ファンタシーク『カノン』が1月1日、初日の幕を上げた。
レフ・トルストイの代表作をミュージカル化した『復活』でカチューシャの弁護士ファナーリンを演じているのが、華形ひかるさん。
『復活』の舞台は19世紀末の帝政ロシア。貴族の娘と婚約しているネフリュードフは、殺人事件の陪審員として裁判所に呼び出され、かつて許されざる恋に落ちた召使のカチューシャと出会う。愕然としたネフリュードフは、無実を訴えるカチューシャ救済のために一生を捧げる決心をする。
「弁護士ファナーリンは職業柄、とても論理的。その彼がネフリュードフとカチューシャの二人に接するうちに、愛について考え始めます。ラストちかく、ネフリュードフを愛するあまり嘘をついたカチューシャが、ファナーリンの前で本心を吐露する場面がありますが、なぜ嘘をついたのかと彼は怒りがこみ上げてくる。はじめはビジネスで付き合っていた人々に、次第に自分の内面が近づいていくのです。作品の途轍もなく深い主題に、ファナーリンの人生も確かに関わっていますし、東京宝塚劇場公演の千秋楽まで役づくりや、題材を考えに考え続けても、なお新しい発見が尽きないのではないかと思うくらい、大きな作品ですね」
主人公ネフリュードフに扮するのは、花組トップスターの蘭寿とむ。華形ひかるさんが研3の2001年7月、『ミケランジェロ』の新人公演で演じたニッコロ、研4の2002年10月『エリザベート』新人公演で演じたエルマー、どちらも本公演で蘭寿とむが演じた役だ。
「研3、研4の頃は男役の基本を最も吸収する大事な時期です。新公時代はみんな本役さんの演技を舞台袖からじっと見続けて勉強します。本役さんの舞台に対する姿勢や居かた、空気感を学ぶところからスタートして、やがて自分流が加わり、自然に呼吸ができるようになります。蘭寿さんは私が『落陽のパレルモ』新人公演で主演させて頂いた2005年に宙組へ組替えされました。そして昨年4月に花組の新トップとして戻ってこられて、『花組らしさが受け継がれているね』と喜んでくださいました。私はずっと花組で育ちました。上の方々が造られてきた花組の伝統を守っていきたいと思いやってきたことが、まちがっていなかったんだなと思えて、すごくうれしかったです」
その花組らしさが、レビュー『カノン』で蘇る。『カノン』は花組にとって久々の新作ショーであり、蘭寿とむがトップ就任後、初のオリジナルショーなのだ。
「冒頭から、ショーの中詰めが始まったかと思うほどにぎやかなので(笑)、楽しんでいただきたいです。今回は男性振付家による男役の群舞があり、衣装も黒系統が多くて素敵。下級生たちもいろんなチャンスをもらっているので、お客様に一人ひとりの顔をしっかり見ていただければいいなと思います」
華形ひかるさんが、しばしば下級生の男役にアドバイスすることがある。
「入団まもない頃は男役のつもりで椅子に腰掛けても、どうしても女の子っぽく見えてしまいます。女の子のまま、がむしゃらに男性を真似ても男役にはなれない。男役であることを強く意識して、女らしさをそぎ落とす作業をするとか。つまり宝塚の男役というものを1枚、きっちりと被った上で、男性の表情や仕草を身につけていく。それでこそ、独特の美しさが生まれるんだと思います」
黒燕尾を着たときは前髪を下ろさないのが、花組の伝統である。
「個性的で現代的なアレンジの髪形もいいけれど、スマートにすっきりしていてもかっこいい!!のが花組」
そのほかにも『花組らしさ』はいくつもあるらしい。心奪われながら数えたくなってくる。
1999年『ノバ・ボサ・ノバ』で初舞台、花組に配属。
2005年『落葉のパレルモ』新人公演主演。09年バ
ウホール公演『フィフティ・フィフティ』で真野すがた
と共にバウ主演。
東京都出身/愛称・みつる