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花組 鳳 真由

7月25日まで上演中の宝塚大劇場花組公演は、2004年に宙組、2006年に花組で上演され好評を博したミュージカル『ファントム』。 新トップスター蘭寿とむ演じるファントムの従者役で得意のダンスを披露する鳳真由、新人公演では全身全霊で憧れのファントムに挑む。

新人公演で ファントムのピュアな心を演じきる

 「ファントムは憧れの役。演じられてうれしいです」と、花組宝塚大劇場公演『ファントム』の新人公演で、主役ファントムに決まった研7の鳳真由さん。鳳真由さんは初舞台を踏んだ翌年の2006年6月、花組で再演された『ファントム』に出演した。2度目になる今回は新トップスター蘭寿とむが率いる新生花組披露公演として6月24日に開幕。鳳真由さんは蘭寿とむ演じるファントムの従者役で得意のダンスを披露している。
 「私が初舞台を踏んだ05年、ロケットを初めて稽古場でお披露目したとき、蘭寿さんが、『がんばっているね、これからも今の気持ちを忘れずに』と声をかけてくださいました。蘭寿さんが宙組に組替えされる直前のバウホール公演『スカウト』(06年3月)に最下級生で出演できたときは、すごくうれしかったです。ふだんから人間的に大きくてあたたかく、包容力のあるかた。花組に戻られて新トップ披露公演をご一緒できるのは幸せです」
 
5年前の『ファントム』では団員役を演じた鳳真由さん。「これまでの公演の中で1番衣装持ちだったのではないかと思うくらい、たくさんの場面に出ていました。街の男としてパリの街角に立っていたり、オペラ座の観客になっていたり、早変わりの連続でしたね。結構、歌も覚えていて、このパートを歌っていたと、お稽古中にどんどん思い出しました」

 新人公演初主演は昨年の『虞美人』、項羽役だった。早くから新公の準主役に抜擢され、研4の2009年1月、『太王四神記』のヨン・ホゲを演じている。「当時はどうして私が準主役を、と信じられなかったですね。本番まで1秒を惜しんで稽古しなきゃ、と焦りました」

 その後も、2010年『麗しのサブリナ』新公でプレイボーイのデイヴィット・ララビーや2011年『愛のプレリュード』新公の青年実業家ジョセフ・バークレーなどを演じたが、ヨン・ホゲや項羽も含め、これまで新人公演で演じてきた役柄はすべて、どこか自分とタイプがちがうような気がしていたそうだ。そのため、本当にやれるかな、大丈夫かなという一抹の不安があったと言う。だがファントムをやるとわかったとき、その不安が消えた。「それどころか本役さんの演技を見ながら、私もこうしたい、ああしたいと、どんどんイメージが膨らんでいく。大人になっても少年のようなきれいな心のままでいるファントムに、すごく惹かれています」

 鳳真由さんの大好きな場面がある。ファントムが初めてクリスティーヌと出会う舞台裏のシーンだ。憧れのオペラ座で働ける喜びに満ちて「HOME」を歌うクリスティーヌ。その美しい歌声を聞き、やさしかった母親を思い出して懐かしい安らぎを感じるファントム。いつしか二人のデュエットになる。
 鳳真由さんは来年、新人公演を卒業して中堅と呼ばれる学年になる。今後の目標をお聞きすると、「目の前にある具体的な課題を消化する、その積み重ねこそが大事だと思います。そのあとにどんな色が出てくるか、自分に期待したい。今は、歌にどれだけ思いを込められるか、そのためにファントムのようにふだんからどれだけ心をきれいにしておけるか、そのことで頭がいっぱいです」

 祖母、母ともに熱心な宝塚ファンという恵まれた環境で育った。小さい頃からクラシックバレエを習い、雑誌「歌劇」やレコード、舞台のビデオなどはいつもそばにあった。だから宝塚音楽学校を受験するのは当然の流れだった。唯一、心配だった寮生活も1週間後にはひたすら楽しい集団生活に変わっていた。

 宝塚歌劇の魅力をたずねると、「現実の生活を離れて夢の世界にワープできるところ。私たちには、お客様にそう感じていただける舞台をつくる使命があると思っています」
 舞台人には一瞬の隙も感じさせない集中力が必要、と自分自身に確かめる目になる。
 屈託のない、瑞々しい表情が魅力的な大型新人だ。

鳳 真由さん

2005年『エンター・ザ・レビュー』で初舞台、花組に配属。10年『虞美人‐新たなる伝説‐』新人公演で初主演。
東京都出身/愛称・ふじP、まゆ、マヨ

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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