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宙組 凪七 瑠海

5月20日から6月20日まで、宝塚大劇場宙組公演は、戦国時代の武将であり卓越した政治家でもあった石田三成を主人公にした歴史ロマン大作『美しき生涯』と、中近東を舞台に展開するエキゾチックで魅惑的なレヴュー『ルナロッサ』の2本立て。 舞台映えする抜群のスタイルと容姿で早くから頭角を現してきた凪七瑠海、大役抜擢で培った経験を活かし、男役として更に飛躍する。

初の戦国物で 秀吉の忠臣を凛々しく美しく

  5月20日から始まる宝塚大劇場公演は、第32回松尾芸能賞優秀賞を受賞したトップスター大空祐飛が率いる宙組による歴史ロマン『美しき生涯』―石田三成 永遠の愛と義―、そしてレヴュー『ルナロッサ』―夜に惑う旅人―の2本立てである。『美しき生涯』は、人気脚本家・大石静氏による書下ろし。主題歌も大島ミチル氏が作曲した話題作だ。演出は石田昌也氏。

 「宙組は石田先生とご縁があり、大劇場公演では『維新回天・竜馬伝!』(,06)や『黎明の風』(,08)、『ファンキー・サンシャイン』(,10)でお世話になっていますし、『殉情』(,08)、『銀ちゃんの恋』(,10)もご担当頂いています。今回の私の役は、片桐且元という豊臣秀吉の忠臣。七本槍の一人としての武勇伝を描いた書物もありますが、資料を調べたあとは、台本に書かれた台詞からイメージを膨らませていこうと思っています」

 2003年、首席で入団した凪七瑠海さんは小さな顔、長い手足、170センチの長身をもつ男役スター。これほど完璧な八頭身もめずらしい。ダンスも抜群にうまく、研1のときから注目の的だった。「黒い役でも白い役でも、いかにも宝塚らしいカチッとした男役が大好き。まだしっかりした体つきも動きもできていなかった下級生時代は、華奢に見える自分の姿にコンプレックスを感じていました」

 研6のときだった。『Paradise Prince』の新人公演で主人公と敵対する重要な役がついた。典型的な敵役のドリームキラーである。「こういうのをやってみたかった」と意気込んだ。翌年の中日劇場公演『外伝ベルサイユのばら―アンドレ編―』でオスカル役をベルナールとの役替りで演じた直後、なんと月組公演『エリザベート』にエリザベート役で特別出演することに。若手男役スターが女役で他組に出る―またとない大抜擢だが、プレッシャーがないわけはなく「私はダンスなら小学生の頃からレッスンしているので自分を解放できます。けれども芝居や歌になると構えてしまう。受験科目に声楽があると知って、キャー大変と慌てたほど苦手意識が強かったんです。そんな私が難曲のソロで綴られたエリザベートを演じることなど考えられなかった」のだった。
 「今でもエリザベートを語るには1日以上、時間が必要かもしれません。それほど自分にとって大きな、大変な経験でした。でも1番大きな収穫が歌だったように思います。その後、最後の新人公演で初めて主役をさせていただいたとき、真ん中に立って思ったのは、エリザベートを経験できてよかったということでした」

 新人公演卒業後の2作品は少年役が続いたが、2011年3月、宝塚バウホール公演『記者と皇帝』で敵役ブライアン・オニールを演じた凪七瑠海さんは、男役独特の硬質な表情に色気が加わり、素敵だった。「いざ、男っぽい役をやってみると、そういう引き出しがないなぁと。私はトップの大空祐飛さんのお芝居が大好きで、よく見させて頂いていますが、ふとした仕草に引き込まれてしまいます。行動を起こす前の動機を感じさせる仕草というか。ラブシーンが終ったあとの背中が雄弁に語っていたり。大空さんは何かの行動の前後がすごいんですよ」

 凪七瑠海さんの大好きなものが、もう一つ。「中近東のショー。不思議な感じの曲が何とも言えず、いいんですよね」

 稲葉太地氏の作・演出『ルナロッサ』は、東西の文化が交じり合う中近東を舞台に、エキゾチックで魅惑的な歌と踊りが繰り広げられる。水を得た魚のように生き生きと踊る凪七瑠海さんが、私たちを確実に非日常の夢へと誘ってくれるはず。6月20日まで、わずか1ヶ月間の白昼夢である。

凪七 瑠海さん

2003年『花の宝塚風土記』で初舞台、宙組に配属。09年月組公演『エリザベート』にヒロイン役として特別出演。同年11月『カサブランカ』で新人公演初主演。10年バウホール公演『Je Chante-終わりなき喝采-』でバウ初主演。
東京都出身/愛称・カチャ、エリカ、ガチャガチャ

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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