秋の空気が流れ始めた清荒神清澄寺。境内奥に佇む鉄斎美術館では9月9日から11月30日まで富岡鉄斎没後90年を記念する展覧会が開催されています。 鉄斎は画にもまして書に優れ、水墨画の神髄である「書画一致」「書画同源」を追求、自分のものとした最後の文人と評されています。この展覧会ではそうした書画の競演、「鉄斎芸術の極み」を観ることができます。
近代文人画の巨匠・富岡鉄斎(1836~1924)は、きわめて筆まめで、長い生涯のなかで多くの書簡をしたためたと言われ、現存する書簡は30歳代から89歳で没するまでの約60年間にわたります。文面から折々の動向や関心事はもとより鉄斎の人間性を垣間見ることができ、興味が広がっていきます。書簡の筆致も画と同様に自由奔放で、書画作品と同様に高い評価を得ています。
書、画に優れることは文人の理想といわれ、鉄斎が近代の文人といわれるのもそこにあります。多くの知人、友人に宛てた鉄斎の交遊関係を語る書簡の中には、晩年に交流のあった清荒神清澄寺先々代法主、坂本光浄和上に画(写真・弘法大師在唐遊歴図、巌栖十八羅漢囲碁図)とともに送られた書簡もあり、鉄斎と清澄寺とのつながりを知ることができます。書簡から制作背景を読み解き、鉄斎の名作を鑑賞することができる楽しみな展覧会となっています。
また、後期(10月18日~11月30日)には名作中の名作「富士山図」屏風が展示されます。